★ おいしいよ〜。おいしいよ〜。隠し味があるからね〜。 〜 知ってる人は知っている! 鮎鮨(あゆずし)の話!! |
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ホーム>バックナンバー2006>アユ(鮎・年魚・香魚)
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秋、アユは川の中流域の岩場で生まれる。
稚魚は群れて川を下り、海へ向かう。
冬、アユは海で暮らす。
主に動物プランクトンを食べる。
春、アユは群れて川を上る。
生まれた川を上るのである。
夏にかけて、アユは上流で縄張りを作り、高級食材(岩に付いた藻)を食べる。
部外者が縄張りを侵すと、激しく怒って追い払う。この習性を利用したのが「友釣り」である。
縄張りを作れない弱者は、群れて動き回るか、淵でいじけて仕方なく下級食材(虫)も食べる。
秋、アユは群れて川を下る。
中流域でメス一尾にオス十数尾が押し寄せて結婚し、事が終わると死んでしまう。
寿命は一年なので「年魚」なのだが、なかにはしぶとく生き続けるものもいる。
また、海に下らず、ずっと淡水で暮らすアユもいる。
これは余り大きくならないので「コアユ」という。
琵琶湖(滋賀県)や池田湖(鹿児島県)のものが有名である。
アユは東アジア全域に分布する。
日本では、北海道南部以南にたむろしている。
夏が美味で、旬は土用過ぎ二十日ほど(七月下旬〜八月初旬)といわれている。
食べ方は塩焼きが最高とされるが、酢味噌和え・てんぷら・酢の物・煮びたし・飴煮(あめに)・雑炊・魚田(子持ちアユ)・うるか(はらわた)などなど、さまざまな調理法があり、頭から尾まで骨からはらわたまで残さず食べられる。
漁法も色々で、釣り(友釣り・どぶ釣り)・網(投網・刺網など)・梁(やな)・鵜飼(うかい)などがある。
鵜飼は長良川(岐阜県)のものが有名である。
アユの漢字は「年魚」のほかに「香魚」「鮎」もある。
「香魚」は、香りがいいからである。
中国では「鮎」はナマズを指すので、この字が一般的である。
つまり、有名な『瓢鮎図』の「鮎」とは、ナマズのことである。
「鮎」は、古くから占いに使われていたからである。
特に神武天皇(じんむてんのう)や神功皇后(じんぐうこうごう)によるアユ占いは有名である(「2004年12月号 紙幣味」参照)。
アユは太古から日本人に食われ続けてきたため、『古事記』『日本書紀』『万葉集』以下、多くの文献に登場してきた。
当然、アユに関する歌も多いので、以下に何首か御紹介。
隼人(はやひと)の瀬戸の巌(いわお)も鮎走る吉野の滝になほしかずけり
大伴旅人
しら縄に小鮎引かれて下る瀬にもち設けたる米の敷網
西 行
鮎くれてよらで過行夜半の門
与謝蕪村
時鳥一尺の鮎串にあり
正岡子規
さて、今回は平安時代後期の説話集『今昔物語集』から、おいしいおいしい鮎鮨(あゆずし)の話を御紹介したい。
こう言うと、何かいやな予感がする方がおられるかもしれない。
「『今昔物語集』の鮎鮨の話って、ま、まさか……!?」
フッフッフ。その通りですので、知ってる方も知らない方も、どうかお食事中には御覧ならないでください。
[2006年6月末日執筆]
参考文献はコチラ
【 お れ 】京都の住人。
【 妻 】「おれ」の妻。
【 馬 】「おれ」の馬。
【 男 】何も知らない男。
【 女 】行商の女。