2.【解答】 | ||||||||||||||
ホーム>バックナンバー2015>2.九人の子の秘密【解答】
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問題が解けない俺と源義経様は、他の逃避行仲間にも聞いてみた。
他の逃避行仲間とは、義経様の北の方・蕨御前(わらびごぜん。平蕨姫)や、家来の片岡弘経(かたおかひろつね。為春)らだ。
「六人足す六人は十二人だってよ。残りの三人はどこに行っちまったんだ?」
「死んじゃったんじゃないの〜?」
「里子に出したとか」
「こういう場合、たいてい神隠しなのよ」
「それとも、答えなんてないんじゃねえ?」
「そうよ。旅人を困らせて楽しむのが趣味な女将なのよ」
結局答えが出ず、あれこれ考えているうちに朝になった。
朝食時、宿の主人と女将が子どもたちを勢ぞろいさせて自己紹介させた。
「長男の一丸(ひいまる)です」
「長女の二子(ふうこ)です」
「次女の三子(みいこ)です」
「次男の四郎丸(しろうまる)です」
「三男の五郎丸(ごろうまる)です」
「四男の六郎丸(ろくろうまる)です」
「五男の七郎(しちろう)です」
「六男の八郎(はちろう)です」
「シチナンのクロウでーす」
女将が俺たちに聞いた。
「このとおり、主人の子が六人。私の子が六人。合わせて九人です。理由はもうお分かりですよね?」
それでも俺達は分からなかった。
「降参です。答えを教えて下さい」
女将はニヤッとして、主人に目で合図した。
主人は子どもたちに声をかけた。
「わしの子六人、わしのそばにおいで!」
すると、九人のうち六人が主人のそばに集まった。
「このとおり、わしの子はこの六人です」
今度は女将が子どもたちに声をかけた。
「私の子六人、私のそばにおいで!」
すると、九人のうち六人が女将のそばに集まった。
「このとおり、私の子は六人です」
「?」
俺はそれでもキツネにつままれたような顔をしていたが、義経様ははたと手を打った。
「なるほど!三人重複しているわけだ!」
女将はうなずいて説明した。
「そうです。九人のうち三人は主人の連れ子です。三人は私の連れ子です。残りの三人が主人と私の子というわけです。みなさん、わかりましたね?」
「はーい」
「ベンジョさんもわかりましたね?ウプピッ!」
俺はすっかり忘れていた。
思い出さなくてもいいことを思い出させられた。
俺のたった二日の黒歴史だ。
[2015年10月末日執筆]
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