2.首領になった男 | ||||||||||||||
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四代将軍足利義持没後に六代将軍(五代義量は義持より先に没)になったのは、弟たちの中からクジで選ばれた足利義教であった(「足利氏系図」参照)。
その義教が初めて赤松満祐を見た感想は、
「ちっさ!」
で、あったであろう。
「そういえば、なんじの父(赤松義則)は背が低すぎて『三尺入道』と呼ばれていたそうだな。誰か、ものさし持って来い」
義教は満祐を近くに招くと、ものさしで身長を測ってみた。
「一尺、二尺、三尺……。ププッ!なんじも三尺じゃねーか!小さっ!」
「もう少しありますけど」
「口答えするな、三尺入道」
諸将はどっと笑った。
満祐は言い返した。
「戦場において背が低いことは不利ではありません。刀も矢も当たりにくいですし、身軽で馬も疲れません」
「道理である!」
義教は同じたが、おもしろくはなさそうであった。
義教には、赤松貞村(さだむら)というお気に入りのオトコがいた。
「ねえ」
「何だい?」
「ちょうだい〜ちょうだい〜」
「何を?」
「土地〜土地〜」
「どこの?」
「アイツの土地〜」
「アイツか」
「そう、アイツの〜」
「アイツは醜い」
「そしてチビ」
「おまえはかわいい」
「はずかしいです〜」
「決定!アイツの土地はおまえの土地!」
「やったー!」
何やらいつか来た道である。
実はこの貞村、あの義持のオトコ・赤松持貞のおいであった。
満祐は舌打ちした。
(チッ!将軍家は二代続けて男狂いかよ。しかも両方うちの分家のオッサンと)
義教は見逃さなかった。
「どうした?何か余に不満でもあるのか?」
「別に」
義教はそれ以上は責めなかった。
しかし、いつか満祐の所領を取り上げてやろうと考えていた。
好きなオトコに貢ぐために――。