1.風呂場の女

ホーム>バックナンバー2022>令和四年7月号(通算249号)物価味 夜の暴れん坊将軍吉宗1.風呂場の女

物価高騰
1.風呂場の女
2.隠し子騒動
3.娘との情事

 風呂場に徳川吉宗が入ってきた。
 なぜか女も入ってきた。
「間違えました! ごめんなさいっ!」
 慌てて出ていこうとした女の腕を吉宗がつかんだ。
「普通、間違えないだろ。余に近づくための作戦であろう?」
「違いますって!」
「よいよい。その願い、かなえてやろう」
「本当に間違えたんです!」
「で、見たのか?」
「何をでしょうか?」
「アレに決まっているではないか」
「アレ?」
「コレに決まっているではないか」
 ぴらーん。
「キャッ! 見てません!」
「でも、今は見た」
「今も見てません!」
「本当に見ていないのか?」
「見てませんってっ!」
「見たいのかい?」
 ぴらーん。
「見たくないですって!」
「本当は少しは見たんだろ〜ん?」
「……。ち、ちらりと」
「許さぬ!」
「え!」
「余の秘密を知ったからには、ただで返すわけにはいかぬ!」
「お許しください! 私は人妻なんです〜」
「ダンナなんか離縁すればすむことだ。手切れ金として二百石やろう」
「そんな〜」
「今日から余の嫁になれ!」
「ううう、考えさせてください〜」
「もう我慢できぬ! 今すぐ余の嫁になれ!」
「ちょっと待ってくださいって!」
「成敗!」
 くるくるくるくる、すっぽんぽ〜ん!
「いやーん! なんてこと〜!!」

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