1.大泥棒・袴垂

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金属盗難ブームに沸く日本
1.大泥棒・袴垂
2.無用心な貴人
3.近寄りがたき貴人
4.貴人の正体

 押忍(おす)! 袴垂(はかまだれ)です。
 長く後世まで名をとどろかす、平安時代の大泥棒です。
 本名じゃありません。本名は不明です。一説に同時代の大泥棒・藤原保輔
(ふじわらのやすすけ)と同一人物じゃないかとも言われていますが、別人です。

袴 垂 PROFILE
【生没年】 ?-?
【別 名】 一説に藤原保輔
【出 身】 一説に京都
【本 拠】 平安京(京都市)
【職 業】 泥棒
【仇 敵】 藤原保昌(一説に実兄)

「袴垂」の名前がどこから来たのかよくわかりません。
 おそらく、袴が垂れてたんでしょうな。
 袴が垂れてるということは、すなわちそれそれ「変態」だったのかもしれません。あっしは記憶にございません。泥棒ですので、なんでもありだったんでしょうな。

今昔物語集』や『宇治拾遺物語』にあっしの特徴が載っています。
 盗人の大将軍!
 豪胆!
 力持ち!
 足が速い!
 思慮深い!
 スゴ腕!
 なーんて、もうべたほめです。どうして天下の大泥棒をこんなにもほめるんでしょうか?そもそもどうしてこんなすごい人間が、泥棒なんかをやっているんでしょうか?
 わかりません。あっしには、まったくもってわかりません。いったん道に迷ったものという者は、なかなか戻ってこれないもんなんでしょうな。

 泥棒をしているとき、当然のようにあっしはワルでした。
 あっしは自分に言い聞かせるんです。
「あっしはワルだ!」
 そうすると、本当にワルのようになってくるんです。
「あっしは最強だ!」
 そう叫ぶと、本当に最強のように思えてくるんです。
 そして、自分がワルであることが、最強であることが、うれしくてうれしくてたまらなくなってくるんです。悪いことをしたくてしたくて我慢できなくなってくるんです。
 そうです、あっしは「最強のワル」だったんです。

 悪行をしでかしているとき、あっしに怖いものはありませんでした。何しろ最強ですから、恐怖なんて感じようはずがありませんでした。
 そうです。
 あの男に出会うまでは――。

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