3.小 用 | ||||||||||||||
ホーム>バックナンバー2021>令和三年12月号(通算242号)英雄味 日本武尊の熊襲征討3.小用
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小碓命一行はソの国に到着した。
クマソの梟帥・トロシカヤたちは祝宴をしていた。
「天神族の大王が王子を差し出してくるそうだ」
「殺人事件を犯した厄介者なので、世話をして欲しいそうだ」
「腐っても王子だ。天神族は自ら人質を出してきたようなものだな」
「もうすぐ来る頃だ」
「いつでも来い! 王子サマの『宮殿』は出来上がっているぞ!」
「っていうか、牢屋だけどな」
「ハハハ!」
上機嫌に笑い合っている人達を見て、小碓命は不思議がった。
「どういうことだ? クマソは背いたはずなのに、全然戦闘態勢じゃないじゃないか」
弟彦公が言った。
「私がトロシカヤの様子を見てきます」
そうではなく、小碓命の到着を報告しに行くのであった。
「そうか。ならば俺はその間に用を足してくる」
小碓命が森に入っていくと、石占横立と田子稻置と乳近稻置が後をついてきた。
「ついてくるな。小便じゃなくて大便だぞ。臭いぞ〜」
「でも、目を離すなって言われているんで」
「そんなにかぎたいのか?」
「そうじゃないですって」
「びっくりするぞ〜」
小碓命は木陰でしゃがんでおっ始めた。
ブリッブリブリッ! もわ〜ん。
「うっ!」
石占はたまらず鼻をつまんだ。
「マジでスゲーくせえ! キョーレツゥ〜」
「鼻つまんでも突き抜けてくるぅ〜」
田子は笑ってむせた。
ぶりぶり! ぶりあん! ぶりすべーん!
もわわ〜ん、ふよふよ、におうにおう〜。
「まーだ出るんかい!!」
乳近は退散した。
「もう限界!僕はちょっとあっちに行ってるから、あとは頼んだ!」
「卑怯!おいらも逃げよっ!」
「逃げるなっ!弟彦公に見張ってろって言われているだろーがぁー!!」
三人が遠巻きになると、
「今だ!」
小碓命はすかさず逃走した。
そして、洞穴に隠れて女装して別人になりきった。
「おい女。王子サマみたいな少年が近くを通らなかったか?」
「あっち」
「森か! 森に隠れたんだなっ!」
「追えっ! 逃がすんじゃねえぞ!」