3.タマネギ | ||||||||||||||
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医者の所に患者がやって来た。
「あのー、体調悪いんです〜」
「どう悪いんですか?」
「ゲロして下痢(げり)して苦しいんです〜」
医者は診察して告げた。
「コロリ(コレラ)ですね」
「コロリ?」
「ええ、コロリと死ぬのでそんな病名がついたんですよ」
患者は驚いた。
「ええ!私、死ぬんですか!?」
「いいえ、私の言うことを聞けば大丈夫です」
「どうすれば?」
「これをお食べなさい」
「なんですか、これ?」
「タマネギです」
* * *
西アジア原産のタマネギは、南蛮船によって江戸時代に日本に伝来したものの、当初は観賞用であった。
が、明治初年から盛んに栽培され始め、いつしかおなじみの食材になったという。
タマネギを爆発的に普及させた理由は、これもまた、
「タマネギはコレラに効くそうな」
と、いううわさであった。
実際に効果があるかはどうでもよかった。
商品バカ売れ!
商人たちはただそれだけを願ってやったことである。
こうして「コレラに効く」神水や炭酸水やタマネギが売れ始めると、様々な商品がコレラに効くようになった。
「ブランテーはコレラに効きます!(電気ブラン)」
「仁丹(じんたん)もコレラにいいらしいで!(森下仁丹)」
「征露丸(せいろがん。正露丸)でコレラ退散!(大幸薬品ほか)」