3.タマネギ

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エボラとコレラ
1.お祈り
2.炭酸水
3.タマネギ
4.人の生き胆
5.シッシッ
6.始末
7.病院

 医者の所に患者がやって来た。
「あのー、体調悪いんです〜」
「どう悪いんですか?」
「ゲロして下痢
(げり)して苦しいんです〜」
 医者は診察して告げた。
「コロリ
(コレラ)ですね」
「コロリ?」
「ええ、コロリと死ぬのでそんな病名がついたんですよ」
 患者は驚いた。
「ええ!私、死ぬんですか!?」
「いいえ、私の言うことを聞けば大丈夫です」
「どうすれば?」
「これをお食べなさい」
「なんですか、これ?」
「タマネギです」

*            *            *

 西アジア原産のタマネギは、南蛮船によって江戸時代日本に伝来したものの、当初は観賞用であった。
 が、明治初年から盛んに栽培され始め、いつしかおなじみの食材になったという。
 タマネギを爆発的に普及させた理由は、これもまた、
「タマネギはコレラに効くそうな」
 と、いううわさであった。
 実際に効果があるかはどうでもよかった。
 商品バカ売れ!
 商人たちはただそれだけを願ってやったことである。
 こうして「コレラに効く」神水や炭酸水やタマネギが売れ始めると、様々な商品がコレラに効くようになった。
「ブランテーはコレラに効きます!
(電気ブラン)
「仁丹
(じんたん)もコレラにいいらしいで!(森下仁丹)
「征露丸
(せいろがん。正露丸)でコレラ退散!(大幸薬品ほか)

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