7.病院

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エボラとコレラ
1.お祈り
2.炭酸水
3.タマネギ
4.人の生き胆
5.シッシッ
6.始末
7.病院

 医者の所に患者がやって来た。
「あのー、体調悪いんです〜」
「どう悪いんですか?」
「ゲロして下痢
(げり)して苦しいんです〜」
 医者は診察して告げた。
「コロリ
(コレラ)ですね」
「コロリ?」
「ええ、コロリと死ぬのでそんな病名がついたんですよ」
 患者は驚いた。
「ええ!私、死ぬんですか!?」
「いいえ、私の言うことを聞けば大丈夫です」
「どうすれば?」
「今から私が言う所へ行ってくださいねー」
「ま、まさか……、バラック小屋では!?」
「いえいえ、大きな病院を紹介してあげますから〜」
 患者は感涙した。
「この医者、初めてまともなことを言った!」

*            *            *

 長崎県長崎市佐古にあった長崎養生所は、日本最初の洋式近代病院であった。
 オランダ海軍軍医ポンぺ
(Johannes Lijdius Catharinus Pompe van Meerdervoort)が、
「コレラの流行を防ぐために病院の設立を!」
 と、江戸幕府十三代将軍徳川家定
に懇願したのを契機に設立されたのである。
 文久元年(1861)に開院したこの病院は、病棟二棟、ベット数百二十という堂々たるものだったという。
 一年後、ポンぺはオランダに帰国するが、その間に診た患者九百三十人のうち、七百四十人が全治したという。

 長崎養生所は慶応元年(1865)に精得館と改称された。
 これらは長崎大学医学部の前身である。

[2014年10月末日執筆]
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