3.ラムネ | ||||||||||||||
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当時、居留地一の商館といえば、清国にアヘンを売りまくって巨万の富を築いたイギリス商社ジャーディン・マセソン商会(後のジャーディン・マセソン・ホールディングス)が建設した英一番館であった。
同商館では、本国からいろいろな商品を取り寄せて日本人に販売していたのである。
ある日、日本商家の番頭が買い付けにきた。
「珍しいものはあるかね?」
英一番館の店員が勧めた。
「『ラムネ』ハ、ドーデスカ?」
「ラムネ?」
「エエ、コノ瓶(ビン)入リノ炭酸飲料水デス」
「ふーん。変わった瓶だな」
番頭はラムネ瓶を手に取った。
ひっくり返したり、振ったり、たたいたりしてみた。
シャカシャカ、こんこん。
店員が驚いて注意した。
「ア!フッタリタタイタリシナイデ!」
ぼーん!
手遅れであった。
ラムネ瓶は破裂し、
「ひゃー!」
番頭はビックリ仰天逃亡した。
ほどなくして、番頭の子供が縁日で父のそでを引っ張った。
「おっとう。『ラムネ』とかいうノミモノがうってるよ。かってかって〜」
番頭は不機嫌になった。
「あれは飲み物なんかじゃないさ」
「え?じゃあ、なんなの?」
番頭は声を潜めて教えてあげた。
「――イギリスの兵器さ」