2.水の巻

ホーム>バックナンバー2008>2.水の巻

『五輪書』はオリンピック入門書か?
1.地の巻
2.水の巻
3.火の巻
4.風の巻
5.空の巻

 この巻には宮本武蔵が創始した流派「二天一流(二刀流)」の基本姿勢や太刀筋が記されている。
 太刀筋については剣士以外には興味ないと思うので紹介しないが、基本姿勢はどのスポーツでも重要なことなので、それぞれの要点を下記に紹介しておく。

 一、心持のこと

 兵法の道において、心の持ちようは、常の心に替わることなかれ。常にも、兵法の時にも、少しも替わらずして、心を広く直(すぐ)にして、きつく引っぱらず、少しもたるまず、心のかたよらぬように、心を真ん中に置きて、心を静かにゆるがせて、そのゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬように、よくよく吟味すべし。

 つまり、平常心を忘れるなということである。

 一、兵法の身なりのこと

 総じて兵法の身において、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とすること肝要なり。

 つまり、平常の姿勢を保てということである。

 一、兵法の目付(めつけ。目つき)ということ

 目の付けようは、大きに広く付くる目なり。観目(かんけん)二つのこと、観の目強く、見の目弱く、遠きところを近く見、近きところを遠く見ること、兵法の専なり。

 観とは遠目、見とは近目である。
 つまり、細かいことに一喜一憂することなく、大局をつかめということである。

 一、太刀の持ちようのこと

 総じて、太刀にしても手にても、居つくということを嫌う。居つくは死ぬる手なり。居つかぬは生きる手なり。

 強く打とうとしても、力を入れれば強く打てるとは限らない。このことは、何かを持って行うスポーツをしている方はよく理解できるであろう。
 この後、

五方の構え
上段
下段
中段
右脇構え
左脇構え

 一、太刀取り様のこと
 一、足づかいのこと
 一、五方の構えのこと
 一、太刀の道ということ
 一、五つのおもての次第、第一のこと
 一、おもての第二の次第のこと
 一、おもての第三の次第のこと
 一、おもて第四の次第のこと
 一、おもて第五の次第のこと
 一、有構無構の教えのこと
 一、敵を打つに一拍子の打ちのこと
 一、二の腰の拍子のこと
 一、無念夢想の打ということ
 一、流水の打ということ
 一、縁のあたりということ
 一、紅葉の打ということ
 一、太刀にかわる身ということ
 一、打つと当たるということ
 一、秋猴
(しゅうこう)の身ということ
 一、漆膠
(しつこう)の身ということ
 一、たけくらべということ
 一、ねばりをかくるということ
 一、身の当たりということ
 一、三つの受けのこと
 一、面
(おもて)をさすということ
 一、心をさすということ
 一、喝咄
(かつとつ)ということ
 一、はりうけということ
 一、多敵のくらいということ
 一、打ち合いの利のこと
 一、一つの打ということ
 一、直通のくらいということ

 と、太刀筋が続いた後、最後にこうしめている。

 千里の道も一足ずつはこぶなり。緩々と思い、この法を行うこと、武士の役なりと心得て、今日は昨日の我れに勝ち、明日は下手に勝ち、後は上手に勝つと思い、この書き物のごとくにして、少しもわきの道へ心行かざるように思うべし。たといいかほどの敵に打ち勝ちても、習いに背くことにおいては、実の道にあるべからず。この利心に浮かべては、一身をもって数十人にも勝つ心のわきまえあるべし。しかる上は、剣術の智力にて、大分一分の兵法をも得道すべし。千日の稽古を鍛(たん)とし、万日の稽古を錬(れん)とす。よくよく吟味あるべきものなり。

 つまり、ここでも何より稽古に励むことが大切だと言っているのである。

歴史チップス ホームページ

inserted by FC2 system