3.火の巻 | ||||||||||||||
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この巻には二天一流の戦い方を記している。
一、場の次第(場所取り)ということ
一、三つの先(先手を取る三つの方法)ということ
一、枕をおさゆる(主導権を握る)ということ
一、渡を越す(危機を乗り越える)ということ
一、景気を知る(状況判断)ということ
一、剣をふむ(攻撃の順序)ということ
一、崩れを知る(スキを突く)ということ
一、敵になる(敵の気持ちを考える)ということ
一、四手を放す(膠着状態を脱する)ということ
一、陰を動かす(先に動いて敵の出方をうかがう)ということ
一、陰を押さゆる(仕掛けてきた敵に対処する)ということ
一、うつらかす(伝染させる)ということ
一、むかつかする(動揺させる)ということ
一、おびやかす(恐怖させる)ということ
一、まぶるる(接近戦に持ち込む)ということ
一、角に触る(勢いのある部分を先にたたく)ということ
一、うろめかす(混乱させる)ということ
一、三つの声(掛け声を区別する)ということ
一、ひしぐ(完膚なきまでにたたきのめす)ということ
一、山海(三回)のかわり(同じ作戦は何度も通じない)ということ
一、底を抜く(戦意をなくさせる)ということ
一、新たになる(意表をつく)ということ
一、鼠頭午頭(そとうごしゅ。やり方を変える)ということ
一、将、卒を知る(思うがままに引き回す)ということ
一、柄をはなす(刀ナシでも勝つ)ということ
一、岩尾の身(不動頑強になる)ということ
を記しているが、もっとも大事なことはやはり最後の部分である。
我れ若年よりこのかた、兵法の道に心をかけて、剣術一通りのことにも手をからし、身をからし、色々様々の心になり、他の流々をも尋ね見るに、あるいは口にて言いかこつけ、あるいは手にて細かなる業をし、人目によきよう見するといいても、一つも実の心にあるべからず。もちろんかようのことし習いても、身をきかせ習い、心をきかせつくることと思えども、みなこれ道の病となりて、後々までも失せがたくして、兵法の直道(じきどう)世に朽ちて、道の廃るもといなり。剣術実の道になって、敵と戦い勝つこと、この法いささか替わることあるべからず。我が兵法の智力を得て、すぐなるところを行うにおいては、勝つこと疑いあるべからざるものなり。
つまり、どんな技を学ぼうと、最後に勝つのは身体の鍛錬と心の修行を怠らなかった者なのである。