2.大江広元が変

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張成沢の変
1.源頼朝は変
2.大江広元が変
3.阿波局も変
4.北条政子も変
5.梶原景時の変

 梶原景時に公文書の一部を奪われた大江広元は困っていた。
 広元の様子がおかしいのを、尼御台
(あまみだい)北条政子(「北条氏系図」参照)は見逃さなかった。
「どうしました?」
「いえ、何でもないです」
「何でもないわけないでしょう。おどおどして。隠し事は許しませんよ」
 政子の前では何人も観念するしかなかった。
「実は、梶原景時が『歴史というものは事実を伝えるべきだ』と、正論を申しまして」
「ふーん、正論ね。――で、具体的に何のことなの?」
「先代鎌倉殿の死についてです」
 これには政子の表情が固まった。
「なるほどね。景時が本当のことをみんなにばらすと脅してきたわけね」
「脅してきてはいません。歴史は事実を伝えなければならないと」
「同じことじゃないですか」
「……」
「亡き夫、源頼朝は変態ではありません」
「当たり前です」
「でも、さっきあなたは夫を変態扱いすることは正論だと」
「そんなこと言ってませんて!」
「まあいいわ。それであなたは景時をどうするつもりなの?」
「説得します」
「ふふふ、あの頑固者を説得させられると思っているんですか?」
「……」
「景時は関東の逆鱗
(げきりん)に触れたのです。もはや始末するしかないでしょう」
「しまつ!」
「大丈夫。あなたは味方になるだけでいいわ。とりあえず、景時嫌いの私の妹を動かしてみようかしら」

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