★ 豪華絢爛!酒池肉林! これが究極の花見だ!! 〜天下人・豊臣秀吉による醍醐の花見!! |
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世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
『古今和歌集』 在原業平(ありわらのなりひら)
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桜は日本の国花である。日本を代表する花というより、「富士」「扶桑(ふそう)」「大和」などとともに日本の代名詞といっても過言ではないであろう。
桜は早くも『古事記』や『日本書紀』に登場する。
山の神・木花開耶姫(このはなさくやひめ。「山岳味」参照)の「このはな」とは桜を指すといわれ、伝十九代大王・允恭天皇(いんぎょうてんのう。「震災味」参照)は、絶世の美女・衣通姫(そとおりひめ)の美しさを桜にたとえる歌を残している。
現存最古の歌集『万葉集(「怨霊味」参照)』にも桜は歌われているが、歌われる数においては梅のほうが多い。奈良時代までは、花といえば梅を指したのである。
桜や梅といえば、花見である。
日本には古くから歌垣(うたがき)という風習があった。若い男女が春や秋に野山に繰り出して遊ぶという、野外コンパやピクニックの類である。当然、春には野山に梅や桜も咲いていたことであろう。これが花見の始まりになったようだ。
奈良時代に入ると、中国から踏歌(とうか)というものが伝えられた。
これは集団で足を踏み鳴らして歌い舞うというダンスであり、これが歌垣と融合し、朝廷の儀式にも採り入れられた。
平安時代に入ると、桜は台頭する。
内裏南殿(だいりなんでん)に橘(たちばな)と並んで植えられていた梅は、いつしか桜(左近の桜)に植え替えられ、花といえば桜を指すようになったのである。
たとえば、次の有名な歌の中にある「花」も、桜を指す。
花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせし間に
小野小町(おののこまち)
梅と桜の立場が完全に逆転したのは、鎌倉時代のことである。
遁世(とんせい)の歌人・吉田兼好は、その随筆『徒然草(「カネ味」参照)』にて、
「桜は花木の代表である」
と語り、放浪の歌人・西行は、桜をこよなく愛した。彼の歌集『山家集』にある次の歌は特に有名である。
願はくは花のしたにて春死なむそのきさらぎの望月(もちづき)のころ
桜の名所としては、古くから吉野山(よしのやま。奈良県吉野町)が知られている。
しかし、大和の山奥にある吉野山は、京都の人々にしては遠すぎた。そこで富豪の中には、自邸の庭に吉野の桜を移植させる者も出てきた。山城嵐山(あらしやま。京都市西京区)の桜は、大覚寺統の祖となった鎌倉時代の帝王・亀山上皇(かめやまじょうこう。亀山天皇・法皇「刺客味」参照)が移したものであり、室町(むろまち。京都市上京区)の桜は、室町時代最強の権力者・足利義満(「戦争味」等参照)の移植によるものである。
安土桃山時代をへて江戸時代になると、花見は庶民たちの行楽になった。特に京都の醍醐(だいご。京都市伏見区)や江戸の上野(うえの。東京都台東区)などが花見の名所としてにぎわった。
江戸時代末期、江戸の染井村(そめいむら。東京都豊島区)の植木職人・伊藤政武(いとうまさたけ)が大島桜と江戸彼岸桜を交配させて新品種「染井吉野(そめいよしの)」を作り出した。やがてこれが桜の代表的な品種となり、桜前線(開花前線)もこれを基準に作られている。
華やかな桜は、古今・貧富を問わず多くの日本人に愛され、歌や能や歌舞伎やその他諸芸能に多く採り入れられた。散り際がよいため、軍国主義にも利用された悲しい歴史もあった。これほど日本の繁栄も没落も、日本人の心の美しさも醜さも知りつくしている花木はほかにないであろう。
今回は天下人・豊臣秀吉の散り際の豪遊にして、安土桃山時代の万国博覧会ともいえる「醍醐の花見」について御紹介したい。
[2002年2月末日執筆]
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参考文献はコチラ
【豊臣秀吉】とよとみひでよし。太閤。秀頼の父。淀殿らの夫。天下人。
【浅野おね(ねね)】あさのおね(ねね)。北政所・高台院。秀吉の正室。杉原定利の娘。
【前田まつ】まえだまつ。前田利家の正室。
【 淀 殿 】よどどの。茶々。秀吉の側室。浅井長政の娘。
【京極竜子】きょうごくたつこ。松ノ丸殿。秀吉の側室。京極高吉の娘。
【豊臣秀頼】とよとみひでより。秀吉の愛児。母は淀殿。
【 義 演 】ぎえん。醍醐寺座主。
【島津義久】しまづよしひさ。南九州の太守。女房たちの衣装を調達。
【羽柴長吉】>はしばちょうきち。秀吉のお気に入りの美少年。
【竹田少将】たけだしょうしょう。堺の医師。
【前田玄以】まえだげんい。奉行。丹波亀山城主。秀吉の側近。
【新庄直忠】しんじょうなおただ。蔵入地代官。秀吉の側近。
【石田三成】いしだみつなり。奉行。近江佐和山城主。秀吉の側近。