3.友よ、静かに瞑れ

ホーム>バックナンバー2022>令和四年10月号(通算252号)併合味 ハーグ密使事件3.友よ、静かに瞑れ

ウクライナ四州併合
1.積木くずし
2.ダークシステム
3.友よ、静かに瞑れ
4.日本の仁義
5.黄金の日日

 第二回ハーグ万国平和会議は、明治四十年(1907)六月十五日から十月十八日にオランダのハーグにて四十四か国が参加して開かれた。
 李相ソル、李儁、李ウィ鍾の密使三名は、六月二十五日にハーグに着いたという。
「まずは議長と列強代表に挨拶に行こう」

 ところが、議長を務めるネリドフ露代表を訪問したところ、なぜか面会してもらえなかった。
「変なヤツラが来ると思うけど相手にしないように」
 事前に都筑馨六が手を打っていたからである。
「どうして会ってもらえないんだ?」
「陛下の信任状も持ってきたのに」
「よし、それなら先に列強の代表に韓国の主張に同調してもらえるようお願いに行こう」

 ところが、米英仏独いずれの代表にもすでに都筑は手を回していた。
「無理だね。韓国の主張には同調できない」
韓国って外交権ないんでしょ? そもそも外交権がない国の特使は国際会議には参加できませんよ〜」
「悪いけど、うちは日本とは険悪になりたくないんでね」
「シッシッ!」
「そんな〜」
 三名は消沈した。
「それならこっちに来なさい」
 ただ、英国人記者ステッドのお情けで李ウィ鍾が記者クラブに招待され、その講演内容が各国の新聞で報道されはした。
 それでも、李儁は絶望するしかなかった。
「クソっ! 私は何の成果も上げられなかった……。陛下に申し訳ない」
 七月十四日、李儁は宿泊先のホテルで自殺してしまった。

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