5.黄金の日日

ホーム>バックナンバー2022>令和四年10月号(通算252号)併合味 ハーグ密使事件5.黄金の日日

ウクライナ四州併合
1.積木くずし
2.ダークシステム
3.友よ、静かに瞑れ
4.日本の仁義
5.黄金の日日

 純宗は病弱で歩行もままならない障害者であった。
 目の前で母を惨殺され、自分も毒殺されかけ、父が脅されるのを見て育ってきた彼には、日本に抵抗する気力も体力もなかった。
「フッフッフ。傀儡
(かいらい)としては最高だな」
 伊藤博文は純宗にうかがった。
「陛下は戦争と平和、どちらがよろしいかな?」
「平和だね」
「なぜですか?」
「戦争になったら、ビリヤードもできないし、音楽も聴けないし、ごちそうも食べられなくなるじゃないか。黄金の日日を謳歌
(おうか)したいのなら、平和が一番だよ」
「まさしくそのとおりです。それこそ名君の御意見です。平和より尊いものはございません」
「ふふーん」
「でも、どうして戦争が起こるかわかりますか?」
「どうしてだろうね」
「軍隊があるからですよ」
「あ、そうか」
「だから、軍隊なんかなくしちゃったほうがいいんですよ」
「でも、そんなことしちゃったら、敵に攻められちゃった時はどうするんだい?」
「大丈夫です。韓国軍なんかなくても、日本軍が守ってあげますから」
「じゃあ、韓国軍はいらないってことだね?」
「そうですよ。日本軍だけで十分なんですよ」
「そんなら韓国軍は解散したほうがいいんだね?」
「さすがは名君! 物わかりが早い〜」
「えへへー」
 明治四十年(1907)七月二十四日、第三次日韓協約が締結された。
韓国軍は解散して国防も内政も日本に丸投げするんだよ〜」

 純宗は聞いた。
「ちなみに統監にとっての『黄金の日日』は何?」
「趣味ってことですか? そうですなー、うーん、うーん、どんなに思い出そうとしても、私はやっぱりオンナしか興味ありませんなー」
 伊藤の好色は非常に有名である。
 あまりにひどすぎたため、先帝・明治天皇から、
「少しは慎まれよ」
 と、直々にしかられたこともあったほどである。
 伊藤は「ふぐ食」を解禁したことで知られるが、「女体盛り」の考案者ともされている。
 おそらく、史上初めて女体盛りされた女性は、内心こう叫んでいたであろう。
(コンナノ、ぜっんぜん偉人じゃねぇー!!)

[2022年9月末日執筆]
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※ 今月号の登場人物のうち七人が国葬にされています。

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