4.鬼神!小林義繁!! | ||||||||||||||
ホーム>バックナンバー2011>4.鬼神!小林義繁(こばやしよししげ)!!
|
明徳二年・元中八年(1391)十二月三十日卯の刻(午前六時頃)、京へ颯爽(さっそう)と山名氏清軍の先発隊が現れた。
「山名陸奥守氏清の弟、山名上総介高義参上ー!」
「小林修理亮(上野介とも)義繁、真っ先に討ち死にしに参った!出会え出会えー!」
鬨(とき)の声とともに山名・小林隊七百騎が四条大宮(しじょうおおみや。京都市中京区)へ乱入したのである。
これを迎え撃つは幕府軍の大内義弘隊五百騎。
「来たか『鬼こごめ』ども」
義弘は兵三百騎をサッと引かせて楯の壁に隠れさせると、射手二百人を前に出して猛射を浴びせた。
ばらばらばららーん!
ぷす!ぷす!
「卑怯ー!」
「卑怯もクソもあるかー!ひるんだぞ!押し出せーっ!」
「ワーワー!」
「ヒヒーン!」
チャーン!チャーン!
ばら!ばら!
「騎馬は馬をねらえー!落馬したら突き殺せー!斬りかかってきたら頭を低くして突っ込んで組み伏せろー!逃げる敵は追うなー!手傷を負っても一歩も退くなー!」
義弘は黒糸縅(くろいとおどし)の鎧(よろい)を着ていた。三尺五寸の太刀を差し、赤地の錦の母衣(ほろ。流れ矢避け)を背負い、三尺一寸の刀身の長刀を水車のように振り回しながら、大音声で立て続けに指示を出した。
しかし、相手は「鬼こごめ」どもである。
すぐに猛然と土煙を上げて巻き返してきた。
「ワー!大内のひょろひょろ矢なんて全然痛くねーぞ!」
「突撃ー!」
「どけどけどけー!」
どどどどどど!
もう!もう!
「お味方、押され気味〜」
「小林の先発隊、二条大宮(にじょうおおみや。中京区)に達しましたー!」
「退くなー!包み込んで射よーっ!」
崩れそうで崩れない大内隊を見て、義繁は感心した。
「やるな大内。しかししょせん大内の野心など知れておる。我が軍の野心は、山名氏清さまを征夷大将軍となすことなり!」
高義も同じた。
「そうよ!こんなところでザコと戦っているヒマも兵数もない!ねらうは御所!足利義満の首一ーつっ!」
二人は長刀に当たる敵をバッタバッタと斬りまくって義満本陣を目指した。
「まずいです!我が軍まもなく突破されます!」
「山名先発隊、将軍さま御本陣へまっしぐらー!」
義弘はあせった。
「一騎なりとも通すなー!もし破られれば、西海屈指の大大名大内義弘の名が廃る!」
義弘は五十騎ばかりを引き連れると、冷泉(れいぜい)小路へ先回りして小林隊の側面を突いた。
「大内周防介義弘参上!義繁っ!神妙に勝負しろーっ!」
「望むところよ!」
義繁は一緒に戦っていた高義に目配せした。
高義は察した。
「おう!大内は任せた!おれは御所に向かう!」
「やあー!」
義繁が血に染まった二尺八寸の小太刀で切りかかってきたため、義弘も長刀を捨てて組み合おうとしたが、
しゅぱ!
義繁にひじを切られたため、
「いってえな、コノヤロー!」
と、思い直して長刀を振り回した。
ブルーン!
義繁はかわして長刀の柄を切ろうとしたが、今度は義弘がかわし、長刀を切り返してすねをねらった。
ブルーン!じゅびっ!
「うっ!」
弁慶の泣き所をやられては、さすがの「鬼こごめ」もかなわない。
苦痛に顔をゆがめ、
どう!
と、倒れるしかなかった。
すると、義弘の家来が喜んでやって来た。
「やった!私がコイツの首を取りますねっ!」
家来、
ぶすっ!
と、勢いよく義繁の首を刺したが、その瞬間、
ぶすすっ!
「ごべ!」
自分も同時に義繁に首を刺され、来世のお供をすることになった。
「敵の大将、小林義繁を討ち取ったりー!」
主君の討死を聞きつけた義繁の家来たちが、
「ああっ、殿が!」
「よくもやったなー!てめーらもみんな死にやがれー!」
と、鬼の形相で復讐に来たが、義弘配下の杉豊後守(すぎぶんごのかみ)がこれらをけちらした。
一方、山名高義は中御門大宮まで進撃、ついに義満本陣に迫った。
「将軍はどこだー!?山名陸奥守氏清の弟、山名上総介高義と出会いやがれー!」
が、奉公衆の摂津左馬助(せっつさまのすけ)や富永左近将監(とみながさこんしょうげん)らへっぴり腰ながら必死で防戦した。
「将軍さまには近寄らせない!」
「ボクたちが相手だ〜!」
しかし高義は相手にしなかった。
「うるさいな!お前たちは見るからに弱そう過ぎる。死にたくなかったら、のけっ!」
「何だとー!コノォ!コノォ!」
富永はめちゃくちゃに長刀を振り回した。
ぶるんぶるんぶるるーん!
すると、なんとな〜く高義の首根っこには先っぽが当たってしまった。
がちっ!
「あり?」
ぴゅーーー!!
「やべ!」
どすーん!
高義は落馬した。
「なめんじゃねえー」
「おしおきだー!」
ぼかすか!ぼかすか!
で、寄ってたかって討ち取られた。