3.かぎつけた妻 | ||||||||||||||
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それ以降、船木頼春は篝屋から帰宅後に出かけることが多くなった。
九月になっても頼春は出かけ続けた。
「今夜また会合がある」
妻は不審がった。
「会合って、何の会合?」
「うん。当番の順番とか決める会合だよ」
「それって、前もあったよね?」
「うん。前もあったけど、何回でもあるんだよ」
頼春が妻の顔を見ずに答えた。
(あやしい……)
妻はますます不審がった。
あんまり怪しいので、こっそり夫のあとをつけてみた。
頼春は鴨川べりの例の廃屋に入っていった。
(何なの、ここ?)
妻は中をのぞいてみた。
客らしき男どもが女たちと乳繰り合っているのが見えた。
妻は絶句した。
(ま!会合とか言って、こんないかがわしいミセに通っていたのねっ!)
メラメラ怒りがこみ上げてきたが、それをおさえつつ、たまたま入口のところにいた遊女に聞いてみた。
「ちょっと!ここは何のミセ?」
その遊女、いつかの「おっぴろげ女」だった。
「見ての通りだけど。――働きたいの?」
「誰がこんなとこで!私はダンナの頼春がここで何をしているのか知りたいだけなのよっ!」
おっぴろげ女はニヤニヤしておもしろがった。
「あーあ、あんた、あのカタブツの新妻なの?へえー」
「ダンナを知ってるの?ダンナはここで何をしているの?」
「何をって、飲んで、食べて、歌って、踊って、その後はイロイロむっちりねっとりこってりと――」
「やめてー!」
「あんたが聞いたんじゃないの」
おっぴろげ女は笑っちまった。 消沈の妻を励ましてあげた。
「大丈夫よ。あんたのダンナは女に手出しなんてしていないよ」
「ホントに?」
「本当よー。なんか女に興味ないみたいだから〜。でも、奥でなんかやってるのよねー。へや暗くして。のっぺり男とか、むさい男とか、むくつけげなる男たちと一緒に何やらコッソリと――」
「え……?何をしているって言うの?」
「さあねー、カマでも掘ってるんじゃないかしら〜?」
「カマー!」
「そうよ。それ以外に暗いとこでやることなんて考えられないでしょ?」
「まさか……、うちのダンナがほかの男と……!?ありえないわ!だって、うちではちゃんと私に対して、その……、あの……、イロイロと――」
「だったら『二刀流』なんじゃないの〜?」
「ニトーリュー!!」
「何ならのぞいてみる?今、最中だろうから」
表の話し声に気づいたのか、ちょうど奥の房からむくつけげなる男が顔を出して怒った。
「なんだおまえら。取り込み中だから、あっち行ってな!」
「いやーーー!!!」
妻は絶叫して逃げ帰ってしまった。