2.一休さん、説く。

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元日生まれの有名人
1.一休さん、悟る
2.一休さん、説く
3.庶民たち、怒る
4.一休さん、死ぬ

 一休は京都の街へ出た。
 髪もひげもそらず、ぼろ布をまとい、木刀を腰に差し、ドクロをかかげ、尺八を吹いて真の禅のありようを庶民たちに説いて回った。
 また、庶民たちと一緒になって酒を飲み、肉を食らい、女と通じた。
「一休さん、坊さんがこんなことをなされてもいいんですか?」
 庶民に聞かれると、一休は言った。
「実はな、ここだけの話だが、偉ぶっている五山の僧たちも、隠れてこういったことをしているんだよ」
「へ!そうなんですか!」
「そうだよ。立派な身なりをしている坊さんが偉いとは限らないんだよ」

 一休のうわさはたちまち都中に広まった。
「おい、変な坊さんがいるそうだぞ」
「なんでも庶民に交じって昼間っから酒を飲んで酔っ払って歌を歌っているそうな」
「この前は獣肉を食らってたぞ」
「楽しそうに女と踊ってたぞ」
「その坊さんによれば、五山の僧たちもそういうことを内緒でやっているそうな」
「幕府にゼニを積んでいるから、なんのおとがめも受けずにすむそうだ」
「本当かな?」
「ありえないとは言い切れないな」
 人々はうわさした。そして、五山の僧を見かけると、ヒソヒソと陰口を言った。
「おい。うわさをすれば五山の僧だぞ」
「一休さんの言う、内緒で私腹を肥やしている五山の僧だぞ」
「一休さんの言う、内緒で幕府にワイロを積んでいる五山の僧だぞ」
「一休さんの言う、内緒で女をかこっている五山の僧だぞ」
 五山の僧たちは固まってしまった。中には平然としている僧もいたが、身に覚えのある僧たちは、余りにみんながジロジロ見るため、恥ずかしくて外へ出歩けなくなってしまった。
「あの、一休とかいうクソ坊主をなんとかしてください!」
 身に覚えのある僧たちは、上司の僧に訴えたが、
「別にお前たちにやましいことがなければ、堂々としていればいいではないか」
 と、採り上げてもらえなかった。
 五山の僧たちはやりにくくなった。

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