2.菩提僊那×光明皇太后

ホーム>バックナンバー2021>令和三年6月号(通算236号)印度味 東大寺大仏開眼供養会2.菩提僊那×光明皇太后

インド型変異ウイルス
1.藤原仲麻呂×藤原巨勢麻呂
2.菩提僊那×光明皇太后
3.橘奈良麻呂×黄文王

「コーミョーコータイゴーサマ、ゴキゲンウルワシュー」
「おまえもな」
「バラモンソージョー、タダイマサンジョー」
「見りゃ、わかりますがな」
「ナマムギナマゴメナマタマゴー」
日本語、流暢
(りゅうちょう)ですね」
「何シロ、日本ニ来テ、モー十六年ニナリマスカラネー」 
「そして、いつの間にやら僧綱
(そうごう)の首位、僧正(そうじょう)にまで昇り詰めた」
「スベテ、皇太后サマ、太上天皇サマ
(聖武上皇)、ソシテ、天皇サマ(孝謙天皇)ノ、オカゲサマデス〜」
「わかっていればよろしい。僧正にはやってもらいたいことがあります」
「ナンデスカー?」
「これが我が夫、太上天皇からの手紙です」
「アリガタヤー」
「もうすぐ東大寺の大仏が完成します」
「シッテルシッテルー。毘盧遮那仏デスネー?」
「そうです。その大仏の仕上げに眼を描いてほしいのです」
「ソレハ、太上天皇サマノ、オ役目デハナインデスカー?」
「夫は体調が優れないため、僧正に代わりにやってほしいのです。やってくれますね?」
「ウウウ、太上天皇サマヨリ年下ノ私ナンカニ、ソノヨーナ大役、務マリマスデショーカ?」
「僧正がやらなければ、鑑真がやります」
「ガンジン! アノ、トーソー鑑真!?」
「そうです。かの高名な唐僧・鑑真です。もうじき、吉備真備や大伴古麻呂ら遣唐使日本に連れ帰ってくることでしょう」
「ウウウ、ヤツガ来ル〜、キット来ル〜〜」
鑑真が大仏に眼を入れたら、おまえにひれ伏す者はもう誰もいません。おまえは僧正位を追われ、鑑真が新たな僧正になるのですから」
「ソンナァ、殺生ナァ〜」
「そりゃそうでしょう。この国は仏教国家です。君も臣もより偉い坊さんにひれ伏す慣習なのです。日本で一番偉い坊さんは僧正です。鑑真が僧正になれば、おまえに代わって鑑真がキャーキャーちやほやされるのです」
「オノレ!鑑真ノクソッタレガァー!!」
「怒ることはありません。おまえが僧正位を奪われなければいいのです。おまえが大仏に眼を描きさえすれば、鑑真はこの国ではおまえよりは偉くなれません。やってくれますね?」
「ヤリマショー! コノ私ガ毘盧遮那仏ニ大キナ瞳ヲ描イテゴランニイレマショー!」
「そうです。それでいいのです。鑑真が僧正にならなければ、真備や古麻呂が大きな顔をすることはありません。二人を操っている連中が権力を握ることもありません」
「二人ヲ操ッテイル連中トハ?」
橘諸兄の子・橘奈良麻呂と、長屋王の王子・黄文王です」
「ナルホド、藤原氏ノ復権ヲ邪魔する急先鋒タチデスネー」

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