7.ルーズベルトは権力の鬼

ホーム>バックナンバー2019>平成三十一年三月号(通算209号)祈り味 ルーズベルトを裸にする7.ルーズベルトは権力の鬼

日本の祈りと韓国の祈り
1.ルーズベルトを裸にする
2.ルーズベルトはバカボン
3.ルーズベルトは怪しげ
4.ルーズベルトは二番煎じ
5.ルーズベルトは病み上がり
6.ルーズベルトはあおり運転
7.ルーズベルトは権力の鬼
8.ルーズベルトに勝つのだ
9.ルーズベルトを呪うのだ
10.おわりに

 一九三六年秋の大統領選挙には、ルーズベルトは「ニューディールの完成」を目指して傲慢なる鼻をうごめかしながら再出馬して、共和党候補のランドンを惨敗させて当選した。ルーズベルトの得票二千七百万票で、一八二〇年モンロー大統領の当選以来の絶対多数であった。すなわちこれを大統領選挙人選挙の票数についてみれば、実に、メイン、バーモント両州の八票を除いて総票数五百三十一票中、五百二十三票がルーズベルトの獲得するところとなった。
 アメリカ新聞界でも「ニューヨークタイムズ」を除いて、大新聞はほとんど財界のルーズベルト嫌いを反映して共和党を支持していたが、開票の結果ルーズベルトの大勝に驚愕
(きょうがく)して、ことに発行部数二百万部の有名な週刊論誌「リテラリーダイジェスト」は紙上予想投票の失敗のため読者激減して廃刊の悲劇を演じた。
 しからばルーズベルト大勝の原因はいかに? それはもちろん、労働者、農民、勤労大衆にばらまかれたる膨大なインフレ景気の賜物である。富豪、資本家のドルの蓄積を吐き出させて高い税金で締め上げたものを、失業救済と農村助成に振り向けたから金権階級の怨嗟
(えんさ)は激しかった。それだけまた単純なる勤労大衆はルーズベルトの笛に踊ったのだ。
 これを統計によって見ると、アメリカ勤労大衆
(俸給・賃金生活者)四千五百万人の中で投票者二千五百万人、この八割すなわち二千万人はルーズベルトに投票したといわれる。またアメリカの農村人口八百万人の中で実際の投票者五百万人、この中で四百万人はルーズベルトに投票したと称している。一方、労働組合の公表によれば、組合労働者四百万人全部がルーズベルトに投票したという。
 これで一つ重大な現象は、金権政治の巨頭であるルーズベルトが、最初金権階級の反発、怨嗟を押し切っていわゆるニューディール経済政策を断行したことである。これをアーネスト・リンドレーは「ルーズベルト革命」と称しているが、しかしこれは老獪なるルーズベルトの欺瞞
(ぎまん)政策であって、彼はむしろ金権階級を威嚇(いかく)してウォール街の支配を企図したのであった。そのために労働者階級の社会勢力を利用したのだ。はたせるかな、国民大衆の支持によってルーズベルトが再選大勝するや、ウォール街はたちまち彼に媚態(びたい)を呈し、長年共和党の出資者たる二十五億ドルの大財閥ロックフェラーがまずルーズベルト支持の声明を発表し、アメリカの金権階級は、草の風になびくようにルーズベルトにひざまずいた。そして一九三七年ルーズベルトの三男と軍需王デュポンの娘エセルとの結婚は、醜悪なる金権政略結婚の見本であった。
 ウォール街が最初、革新政策に反対して大統領を毛嫌いしながら再選によってその態度を豹変
(ひょうへん)し大統領絶対支持を示した前例は、一九〇四年セオドア・ルーズベルト再選の場合が全く同様である。

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