2.拾った! | ||||||||||||||
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小子部栖軽は、飛鳥方面に爆音をとどろかせて落ちたものを拾いに行くことになった。
赤い小旗を付けた矛を持ち、赤い鉢巻を巻き、気合を入れて馬に乗って向かったのである。
「『雷様』はどこに落ちた?」
途中、住民たちに聞いて回ったが、
「あちらです」
「豊浦寺の方に落ちたようです」
結構目撃者がいたため、発見は容易であった。
「雷様」は豊浦寺(とゆらでら。建興寺・小墾田寺・桜井寺。明日香村)と飯岡の間にある丘に落ちていた。
「これか」
栖軽は神官たちを呼び寄せると、御祓(おはらい)させて輿(こし)に乗せ、磐余宮へ運ばせた。
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現在の雷丘(奈良県明日香村)周辺 |
「大王様。『雷様』を捕まえて参りました」
雄略天皇と草香幡梭皇女は喜んだ。
「おお、雷神とは石であったか!」
「天から降ったきただけあって、どことなく変わった石よね〜」
「豊浦寺と飯岡の間にある丘に落ちていたんですが、地面にめり込んでいました」
「ものすごい衝撃だったからな」
「この石、ときどき光ったりもしますよ」
「怒っているのかしら?」
「怖い怖い。触らない方がいいのかもしれない」
「では、どうしましょう?」
「よし。落ちた丘に祭るがよい」
こうして「雷様」は落ちた丘に埋められ、神として祭られた。
以降、この丘を「雷丘」というそうである。
年を経て、栖軽は死んだ。享年不明。
雄略天皇は彼の墓を雷丘に作らせ、
「雷を捕まえた小子部栖軽の墓」
と、記した柱を立てさせたという。