3.残った!

ホーム>バックナンバー2013>3.残った!

ロシア隕石落下
1.落ちた!
2.拾った!
3.残った!

 小子部栖軽が死んでしばらくしたある日、雷丘の前を、根っからの泥棒が通りかかった。
 根っからの泥棒は、「雷を捕まえた小子部栖軽の墓」と記した柱を見て笑った。
「ぷはは!雷を捕まえただと?ありえねえ話だ!」
 それでも気になった根っからの泥棒は、近所の住民に由来を聞いてみた。
 すると、近所の住民は語った。
「そうじゃよ。あれは確かに雷様を捕まえなさった偉いお方のお墓じゃよ。偉いお方は雷様と一緒にあの丘に葬られておる」
「雷様を埋めた?ますます意味が分からない。雷様って、どんな形をしているのだ?」
「さあな。すぐにマル秘にされたんで、この辺の下々の者では誰もその姿を見た者はいないんじゃ」
「ふーん」
 根っからの泥棒はひらめいた。長年の勘から勝手な解釈をしてニヤッとした。
(分かったぞ!雷様とか言っているけど、本当はお宝なんだろう!そうだ!あの丘には金目のモノが埋められているから、人を近づかせないように怖い怖い雷様が埋められてるって言いふらしているだけなんだ!へへっ!オレはだまされねえぞ!お宝はオレサマがいただきだっ!)

 その晩、根っからの泥棒は雷丘へ盗掘に出かけた。
 墓守が寝ているすきに、こっそり墓穴を掘った。
 さっさ、さっさ。
「お宝ぁ〜♪お宝ぁ〜♪」
 棺が出てきたため、引きずり出して喜んでふたを開けた。
 ぱか!
「お!」
 中には「雷様」が入っていた。
「なんだよ〜」
 根っからの泥棒はがっかりした。
「ただの石ころじゃね〜か〜。こんなもんいらねーよ!」
 根っからの泥棒は「雷様」をおっぽり出して蹴飛ばした。
 ガン!
 ぐきっ!
「イタッ!」
 足をくじいた。
 根っからの泥棒は怒った。
「骨折り損で、踏んだり蹴ったりじゃねえか!」
 根っからの泥棒は、痛い足を引きずりながら去っていった。

 翌朝、墓守から雄略天皇に通報があった。
「大変です!雷丘が荒らされ、棺が開けられています!」
 驚いて雄略天皇が駆けつけた。
「何だと!『雷様』は盗られたのか?」
「ええ、棺が空っぽになっています」
「何てことだ!せっかく栖軽が捕まえたのに!」
 雄略天皇が周辺を歩き回ると、黒い石が落ちていた。
「ありゃ」
 拾ってみると、それこそ「雷様」であった。
「なんだ。盗られてなかったじゃないか」
 近づいてきた墓守は驚いた。
「え!『雷様』って、その石だったんですか!?」
「他言無用。元の場所に埋めて祭り直しておけ」
「ははーっ」

 こうして「雷様」は再び雷丘で祭られた。
 それから、雄略天皇は小子部栖軽の墓の碑文を改めさせた。
「雷を捕まえた小子部栖軽の墓」
 から、
「生きている時だけではなく、死後も雷を捕まえた小子部栖軽の墓」
 に。

[2013年2月末日執筆]
参考文献はコチラ

歴史チップス ホームページ

inserted by FC2 system