2.だー! | ||||||||||||||
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ある夏の夕方に地酒の差し入れがありました。
酒飲みの私はたまりませんでした。
「うまそうだねー。早くみんなで飲みたいねー」
でも、下女たちがそばにいます。お松やお竹ら三、四人が表で涼んでたむろしています。
私たちが夕方から飲んでいるところを見たら、きっと緒方先生や奥さん(緒方八重)にチクることでしょう。私は塾長ですが、任せられているだけです。そんなことをされたら、
「あんたクビ!」
てなことにもなりかねません。
でも、酒というものは、今すぐにでも飲みたいものなんです。目の前に置いてあると、余計にたまんないわけです。
「あの女たち、早くどっかに行かないかなー」
すると長州出身の塾生・松岡勇記(まつおかゆうき)が私に耳打ちしました。
「お任せください。私が一瞬で追っ払ってきますわ」
松岡は下女たちのもとに行きました。
「おーい、お松どん、お竹どん、みんなおいでー」
下女たちは何かくれるのかと思って、
「なになにー」
と、喜んで寄ってきました。
すると松岡は、いきなり、
「だー!」
と、着物の前をはだけたんです。
「キャー!」
「いやーん!」
「キライー!」
下女たちはびっくり仰天はじけ散って、一瞬にしてどっかにふっ飛んでってしまいました。
その後で私たちは堂々と心ゆくなく酒を飲むことができたんです。
私は学習しました。
「なるほど。うるさい下女を追い払うには、ああすればいいのか」