5.ALIVE

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一線を越えては今井?
1.Let`s Heat Up!
2.Go! Go! Heaven
3.あしたの空
4.STEADY
5.ALIVE

 長崎為基は、何を思ったか「面影」の切っ先を砂地に突き立てた。
 ずん!
 そして、その横から少し離れ、敵に目立つように仁王立ってみた。

 新田軍の兵たちは騒いだ。
「あ! アイツ、刀を横に置きやがった!」
「手ぶらで俺たちを挑発してるぞ!」
「ふん、なめたマネしやがって!」
「刀がなければこっちのもんだ!」
「どーれ、拙者が近づいて討ち取ってくれよう!」
「だまされるな! 近寄ったらすぐに刀を取って応戦するつもりだろう」
 新田軍は引っかからなかった。
 依然として遠くから矢を射かけてくるだけであった。
 バシ!バシ!
 為基は時折飛んでくる矢を払い落としていたが、
「ウッ!」
 矢に当たったふりをして前のめりに倒れた。
 ばた!

 敵は喜んだ。
「やった! 倒れた!」
「俺の矢が当たったのだ!」
「違う! わしのだ!」
「何を言う! 実際に首を取った者の手柄だ!」
「俺が取るぜ!」
「早い者勝ちだー!」
 兵たちは先を争って為基の周りを取り巻いた。
「動かないぞ」
「もう死んだのか?」
「虫の息だろうがどの道死ぬのだ」
「首、もーらいっ!」
 笑顔の気持ち悪い兵が馬乗りになって首を取ろうとしたとたん、
 ぱあ!
 と、砂が舞い上がった。
 キラッ!
 面影が光ったかと思うと、笑顔の気持ち悪い首と一緒に仲良くクルクル回って落ちた。
 ぼてころ!
 ずん!
 為基があくびして起き上がって聞いた。
「誰だ? 俺様の昼寝の邪魔をするのは? 思わず斬っちまったじゃねーか」
「のわわ!」
 兵たちはびっくりして後ずさりした。
「全然死んでねーじゃねーか!」
「ピンピン生きてるじゃねーか!」
「寝ててもこの強さかよっ!」
「あぶねー! 俺までやられるとこだったぜ!」
 為基はブリブリ怒り出した。
「人の安眠の邪魔をしたヤツラが、何をブツブツ言ってやがるんだ! まずは謝罪が第一だろ!」
 一同突っ立っていると、為基は鍔元
(つばもと)まで血に染まった刀を振り上げて襲いかかってきた。
「もう怒った! てめーら全員叩き斬ってやるからそこへ直れっ!」
 返り血を浴びたその形相は、まるで赤鬼のようであった。
 兵たちはびっくりして逃げ出した。
「怖ええ!」
「これゃかなわん!」
「逃げろー!」
「まだ追ってくる〜!」
「振り返るなっ! わっ! また顔見ちゃった! いかん! 夢に出ちゃうーーー!」
 兵たちは必死で逃走した。
「ハアハア! みんな冷静になろうよ。敵は一人だよ」
「だったらお前が行けっ!お前が行って首まで取り終えろよっ!」
「いやだー! 怖いよー!」
 兵たちが逃げ回っているうちに、為基はどこへともなく姿をくらませてしまった

(「迎撃味」へつづく)

[2017年7月末日執筆]
ゆかりの地の地図
参考文献はコチラ

 ※ 長崎思元は東勝寺へ向かい、北条高時らと最期を共にしました。
 ※ 長崎為基はまんまと逃げうせ、出家して円海と名乗り、加賀で称名寺
(石川県小松市。後の真宗寺)を建立したそうです。 

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