1.ドジでノロマな亀

ホーム>バックナンバー2019>平成三十一年四月号(通算210号)改元味 天平改元1.ドジでノロマな亀

東京五輪は呪われているのか?
1.ドジでノロマな亀
2.亀のみぞ知る
3.亀亀亀亀さわ〜る亀亀
4.亀は万年
5.捨てる亀あれば拾う亀あり

 えへっ、亀です。
 川や沼に普通にいる、何の変哲もないイシガメです。
 とはいえ最近では、都会の方は御存じありませんか。

藤原麻呂 PROFILE
【生没年】 675-737
【出 身】 藤原京?(奈良県橿原市)
【本 拠】 藤原京→平城京→美濃など
【職 業】 公卿
【役 職】 美濃介→左京大夫→参議・兵部卿
【位 階】 従五位下→従三位
【 父 】 藤原不比等
【 母 】 藤原五百重娘
【兄 弟】 藤原武智麻呂・房前・宇合
・宮子(文武天皇夫人)
・長娥子(長屋王妾)
・光明子(聖武天皇皇后)
・多比能(橘諸兄室)
・女(大伴古慈悲室)
・新田部親王(異父兄)
【 妻 】 当麻氏・稲葉気豆娘・大伴坂上郎女ら
【 子 】 藤原浜成・綱執・勝人
・百能(藤原豊成室)
【主 君】 元正天皇→聖武天皇

 私の前半生は自由でした。
 泉川
(いずみがわ。後の木津川)でのんびりと暮らしていました。
 しかし突然、恐怖がやって来ました。
 藤原京
(ふじわらきょう。奈良県橿原市)から貴人の家族が泉川沿いにある瓶原(みかのはら。京都府木津川市)に遊びに来たのです。
 河原で甲羅干しをしていた私を見つけると、
「かめー!」
 と、ガキたち四人が駆け寄ってきたのです。
 私は頭や手足を引っ込めて警戒しました。
 ばっ!
 体が宙に浮きました。
「捕まえた!」
「持って帰ろうか?」
「亀なんて珍しくもねえ。捨てなよ」
「そうだな。ひっくり返して置いておいてやれ」
「ひでえ!」
「アハハ!」
 悪ガキたちは私をひっくり返して置き去りにして帰ってしまいました。

 私は困りました。
 頭や手足を出してジタバタしました。
 ひっくり返されると、なかなか元に戻れません。
「ひどいな、兄さんたち」
 悪ガキの一人がまだ残っていました。もがいている私を見て笑いました。
「まったく、ドジでノロマな亀だよ」
 ガキは私を戻してくれました。
「まるで僕と一緒だよ」
 ガキは私を持ち上げましたが、優しい目をしていました。
「僕は藤原麻呂
(まろ)。僕の豪邸に池があるから、そこですむかい?」
 聞かれましたが、懐に入れられた私に選択する権限はありませんでした。
 その日から私は、ノラ亀から飼い亀になり、「天平
(てんぴょう)」という名前をもらいました。

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