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  〜 奈良時代末期の「桓降ろし」!氷上川継の変!!

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菅降ろし
1.政権交代
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 かつて民主党は「トロイカ体制」であった。

「善」の鳩山由紀夫(はとやまゆきお)――。
「悪」の小沢一郎
(おざわいちろう)――。
「偽善」の菅直人
(かんなおと)――。

 贅沢(ぜいたく)なトライアングルであった。
 国民は三者のうち誰かを支持したくなった。
 強力なスクラムを組んだトロイカ体制は、戦後政治を牽引
(けんいん)してきた自民党政権を打倒し、奇跡の政権交代を成し遂げたのである(「役人味」参照)

 が、国民の圧倒的支持で成立した鳩山由紀夫連立内閣はもろかった。
 鳩山の「善」は、外国には通用しなかった。
 アメリカにそっぽを向かれ、中露を図に乗らせる結果になってしまったのである。

 小沢の「悪」は、当初から国民に不評であった。
「政治とカネ」問題でたたかれた小沢は、昨年
(平成二十二年)、鳩山とともに政権中枢から去っていった。

 こうしてトロイカ体制は崩壊し、「偽善」の菅だけが残った。
「偽善」ゆえに、彼は首相になってすぐにたたかれ始めた。
菅は何をやっているんだ」
「抵抗勢力にもいい顔して、何も進まないじゃないか」
「トロイカ体制は崩壊したんだ。菅も長くはないだろう」
 誰もがそう思ったことであろう。

 ところが、この「偽善」というのがなかなかのものであった。
「偽善」は善にも悪にも見えるため、一部善悪双方の国民を味方につけることに成功したのである。
あれ?なんだかいいこと言ってるような〜」
「ふーん。結構、現実的なことを言っているじゃないか」

 加えて脅威の粘り腰である。
オレは犬死はしたくない!」
 菅の執念のダダを許してしまう優しい国民も多い。
もー。やりたいならやれば〜」
「今は仲間割れしている場合ではない」
「どーせ誰に代わったとしても同じことだし」

 さらに菅は、
総理、御退陣を!」
 と、迫る部下に対しては「伝家の宝刀」をちらつかせた。
「君たち、これが目に入らないのかな〜?」
「ああっ!それはっ!」
「解散だけは御勘弁を〜!」

 菅が意識しているのは、小泉純一郎元首相の「小泉劇場」であろう。
「脱官僚!」
「脱小沢!」
 そして今度は、
「脱原発!」
 である。
 敵を作って戦いを挑むやり方は、かつて「脱郵政」で戦い、「郵政解散」をぶちまかした「小泉劇場」そのものである
(「刺客味」参照)

 しかし、「菅劇場」は「小泉劇場」より客の入りが少ない。
「八百長」だと客に見透かされているからであろう。
 小泉は自分で答えを出してから「決戦」に挑んだが、菅は「決戦」を避け、国民が出した答えになびこうとしているのである。

 では、何が菅を「偽善」に走らせたのか?
 あの「未納三兄弟」の失敗
(「ヤミ味」参照)から学習したのであろう。
(決戦は危険だ。決戦して敗れれば失脚しかない)
 また、「善」の鳩山と「悪」の小沢の失脚からも学習した。
(理想一辺倒も現実一辺倒もダメだ。一番いいのは両方のイイトコ取りだ)
 さらに、麻生太郎
(あそうたろう)元首相の失敗(「変化味」参照)からも学習している。
(ブレないためには「ぶら下がらない」ことだ)
 そうである!
 こうして菅が編み出したのが、絶対負けない「偽善」の延命術なのである!

 では、なぜ「偽善」は強いのであろうか?
 歴史を振り返ってみても、世界を見渡してみても、それは明らかであろう。
 現在、世界の覇権を争っている大国は、「偽善国家」だらけである。
 彼らはみな一様に自国の「正義」を掲げているが、本当に「正義」の国など一つもない。彼らにとって大切なことは「正義」を行うことではない。「正義」を行っているように見せかけることなのである。

 私は「偽善」を支持しているわけではないが、政局や外交でこれを用いることは否定しない。
 目的が我欲ではなく、国民のためであればよしと考えるのである。
 それにしても、しょせん「偽善」はウソである。
 ウソは姑息
(こそく)な手段であり、一時的に勝ったとしても、結局はばれて信用を失ってしまうことが多い。
平城味」&「内乱味」ではないが、
「策というものは、弄
(ろう)した者のところに必ず返ってくるもの」
 であろう。

「菅降ろし」の裏で、政府は無慈悲な大増税計画を進めている。
「増税は国民のみなさまの社会保障のためですよ〜」
 いずれこの「偽善」の正体も、白日の下にさらされる時が来るであろう!

 はい。というわけで今回は奈良時代末期の「桓(かん)降ろし」、「氷上川継(ひかみ・ひがみのかわつぐ)の変」を紹介します。
 この場合の「桓」とは、伝五十代天皇桓武天皇のことです。
 それでは御覧ください。

[2011年6月末日執筆]
参考文献はコチラ

「氷上川継の変」登場人物

【氷上川継】ひかみ・ひがみのかわつぐ。塩焼王の子。新田部親王の孫。天武天皇のひ孫。

【不破内親王】
ふわないしんのう。川継の母。桓武天皇の元おば。

【藤原法壱】ふじわらのほういつ。川継の妻。浜成の娘。京家。

【藤原浜成】ふじわらのはまなり。参議・大宰帥→大宰員外帥。川継の岳父。法壱の父。京家。

【大伴伯麻呂】おおとものおじまろ。参議・中宮大夫・衛門督。川継の同志。
【中臣伊勢老人】なかとみのいせのおきな。川継の同志。
【大原美気】おおはらのみけ。川継の同志。
【藤原継彦】ふじわらのつぐひこ。川継の同志。浜成の子。京家。
【吉備 泉】きびのいずみ。造東大寺長官。真備の子。

【山上船主】やまのうえのふなぬし。陰陽頭。憶良の子?川継の同志。
【三方王】みかたおう。川継の同志。弓削女王の夫。
【弓削女王】ゆげじょおう。川継の同志。三方王の妻。

【藤原魚名】ふじわらのうおな。左大臣(首班)・大宰帥。永手の弟。鷹取の父。北家。

【大伴家持】おおとものやかもち。参議・左大弁・春宮大夫・陸奥守。大伴家持

【大和乙人】やまとのおとひと。川継の資人。

【藤原鷹取】ふじわらのたかとり。左京大夫。魚名の子。北家。

【悪人たち】
【衛士たち】

【坂上苅田麻呂】
さかのうえのかりたまろ。右衛士督。田村麻呂の父。

【和気清麻呂】わけのきよまろ。桓武天皇の側近。和気清麻呂

【藤原種継】ふじわらのたねつぐ。左衛士督。百川のおい。桓武天皇の側近。式家。藤原種継

【桓武天皇】
かんむてんのう。伝50代天皇。光仁天皇の子。
桓武天皇

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