足利義輝３．義輝不満～誰も相手にしてくれない

３．義輝不満～誰も相手にしてくれない

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日本剣術史

１．義輝誕生～逃げ回るオヤジたち

２．義輝将軍～卜伝流奥義「一之太刀」

３．義輝不満～誰も相手にしてくれない

４．義輝最期～二条御所の死闘

　塚原卜伝は京都を離れ、武者修行の旅へ出かけた。
　足利義輝は以後も剣術の腕を磨いたが、師がいなくては物足りなかった。
「おい。余の剣の相手をしてくれ」
　木刀を家来に渡して誘っても、みんな手加減して掛かってくる。
　何しろ相手は将軍サマである。将軍サマにけがでもさせたらとんでもない。
「手加減するな！」
　義輝が怒っても、
「してませんよ～」
　言ってるそばから構えも振りもチャランポランである。
「うざつたい！誰か、真剣勝負をせい！」
　義輝は木刀を投げ捨てると、真剣を持ってこようとした。
「うわぁ、お許しを～」
　家来たちはクモの子を散らしたように逃げ去ってしまった。

　義輝はイライラしていた。
　権力を振るうことができない彼は、せめて剣を振るうことだけでも満足したかった。
「ああ、真剣勝負がしたいなー」
　いつもぼやいているうちに、
「やりましょうか？」
　と、言う目つきの悪い男が現れた。
　細川晴元の家臣・三好長慶のそのまた陪臣・松永久秀である。
　久秀はひそかに思った。
（公然と将軍を斬(き)れる絶好機だ）
　が、久秀は、
「よし、やろうか」
　と、血眼でビュンビュンバシンバシンすごい勢いで竹を試し切りする義輝の迫力にビビッてしまった。
「いえ、やっぱ結構です。とてもかないません」
「なんだ、つまらん」
　義輝は残念がった。
　久秀は心中だけで言ってあげた。
（いつか相手になってあげますって。とってもとっても大勢でねっ）