2.ごはんタダ

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舛添都知事公私混同問題
1.見てるだけ〜
2.ごはんタダ
3.おかずタダ
4.自分は働かない
5.他人に働かせる
6.募金詐欺?
7.豪快に寄付
8.ケチvsケチ
9.売れない物を売る
10.売れない物を高く売る

 吉四六のケチは成長しても治らなかった。
 そもそも治すつもりはなかった。
 大人になると、ケチだけではなく、悪知恵も働くようになった。

 吉四六の村におもしろい話を聞くのが大好きな金持ちがいた。
 でも、この金持ち、どんな話をしても、決まって、
「そんなことはありますま〜い」
 と、話の腰を折ってしまうので、話している人は続きを話せなくなってしまうのであった。
 そのため最近では、この老人におもしろい話をする者はいなくなってしまっていた。
「つまんねえな」
 そんな折、吉四六がこの邸宅の前を通りかかった。
 話好きの金持ちは喜んだ。
「吉四六さん、吉四六さん。いいところに来た。なにかわしにおもしろい話を聞かせておくれ」
 さすがの吉四六も、この金持ちにはうんざりしていた。
「嫌だね。あんたの『そんなことはありますま〜い』は、話をする気を無くしちゃうからね」
「今日はソレ、言わないから」
「信じられないな。これはもう無意識のうちに出ちゃっているんだよ。口癖になっちゃってるんだよ」
「絶対言わないから、何か話をしておくれよ〜」
 そこで吉四六は条件を出した。
「じゃあ、もし、『そんなことはありますま〜い』って言っちゃったら、おらに米一俵くれるかい? それなら話をしてあげてもいいぜ」
「わかった。言ってしまったら米一俵出すよ。言わないから大丈夫だ」
 吉四六は話し始めた。
「昔、あるところに殿様がいた」
「うんうん」
参勤交代江戸へ向かうことになった」
「うん」
「途中の山道で何かが鳴いていた」
「何かな?」
「ピーヒョロロー、ピーヒョロロー」
「あ! トンビだ」
「殿様がかごから顔を出した」
「うん、様子を見るだろうな」
「ブリブリッ! ヒューン! べちゃっ!」
「?」
「トンビのフンが殿様の羽織に落ちた」
「まさか、そん――」
「え? なに?」
「いや、なんでもない。あぶねえ、引っかかるところだった。――で、続きは?」
「殿様は家来に命じた。『羽織の代わりを持ってまいれ』と」
「そうだろうな。汚いもんな」
「しばらくして、またトンビから何かが落ちてきた」
「え?」
「ブリブリッ! ヒューン! べちゃっ!」
「まさか」
「今度は殿様の刀にトンビのフンが落ちた」
「そんなことは――、いーやその、なんでもない」
「殿様は家来に命じた。『刀の代わりを持ってまいれ』と」
「だろうね」
「しばらくして、ブリブリッ! ヒューン! べちゃっ!」
「またかい」
「三発目のフンが殿様の顔面に命中!」
「ププッ、悲惨〜」
「殿様は自分の首を斬ると、家来に命じた。『首の代わりを持ってまいれ』と」
「ウハハ! まさかそんなことはありますま〜い!」
 金持ちは大笑いした。
 が、吉四六の満面笑顔に気づいて笑いが止まってしまった。
「言いましたね? 『まさかそんなことはありますま〜い!』って、確かに言いましたよ! はいっ、米一俵いただきっ!」
 金持ちは舌打ちした。歯ぎしりした。地団駄踏んで悔しがった。
「こいつは一杯食わされたぜ!」

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