8.ケチvsケチ

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舛添都知事公私混同問題
1.見てるだけ〜
2.ごはんタダ
3.おかずタダ
4.自分は働かない
5.他人に働かせる
6.募金詐欺?
7.豪快に寄付
8.ケチvsケチ
9.売れない物を売る
10.売れない物を高く売る

 吉四六でも、まともに働くこともあった。
 ある時、吉四六は庄屋に仕事を頼まれた。
「川の渡し舟の船頭が風邪を引いた。吉四六さん、今日だけ代わりに船頭をやってくれないか?」
「いいよ」

 お昼頃、吉四六の舟に、客の侍がやって来て聞いた。
「おい、船頭」
「何ですか?」
「渡し賃はいくらだ?」
「八文です」
「八文は高いな。六文にしてくれ」
「いえ、八文です。決まりなんで」
「ダメだ六文で乗せてくれ」
(ケチな侍だな)
 そう思ったとたん、吉四六に対抗心が芽生えた。
(そう言うおらもケチだった……)
 バチバチと火花が飛び交う、絶対に負けられない戦いが始まろうとしていた。
「分かりました」
 なのに吉四六は折れた。
「六文で乗せましょう」
 侍は勝ち誇った。
「初めからそうすりゃいいんだよ」
 しかし、吉四六は負けたわけではなかった。
 川の途中で舟を止めたのである。
 侍は訳が分からなかった。
「どうした? まだ途中じゃないか。なぜ止まるんだ?」
「ここまでが六文分になります。あと二文追加しないと向こう岸にはたどり着きません」
 侍は怒った。
「水の上に降りろというのか!」
「泳ぐという手立てもございます」
「話にならぬ! 泳がないために渡し舟に乗ったんだろうがー!」
「だから、舟を進めるにはあと二文必要なんです」
「うぬぬ……」
 侍は作戦を変更した。
「もういい! こんな不愉快なヤツにはビタ一文も払いたくなくなった! 初めから舟に乗らなかったことにするから、元の岸まで引き返せ!」
「かしこまりました」
 吉四六は元の岸に舟を戻した。
「ああっ、二度手間だぜ!」
 侍はブリブリ怒って舟を降りようとしたが、その腕を吉四六がつかんで請求した。
「お客さん、タダ乗りはいけませんぜ。行きの六文分と帰りの六文分、合わせて十二文いただきます」
 侍は舌打ちした。歯ぎしりした。地団駄踏んで悔しがった。
「こいつは一杯食わされたぜー!」

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