3.行列のできる田沼屋敷

ホーム>バックナンバー2019>令和元年11月号(通算217号)金品味 田沼意次賄賂生活3.行列のできる田沼屋敷

金は天下の回り方がおかしい
1.なぜか評判のいい男
2.賄賂こいこい
3.行列のできる田沼屋敷
4.拡張もできる田沼屋敷
5.大きな京人形
6.金の切れ目が縁の切れ目

「お願いします、田沼さま」
「私も出世させてください」
「金品なら惜しげもなく差し出しますから」
 田沼意次の屋敷には、陳情や御機嫌うかがいの行列が絶えなかった。
 随筆『甲子夜話
(かっしやわ)』で知られる肥前平戸(ひらど。長崎県平戸市)藩主・松浦静山も、二十歳の頃、御機嫌うかがいに行ったことがある。
 その時はすごい客人の数で、三十畳くらいの広座敷は満員になっており、周囲に行列が取り囲み、外にまではみ出て座っている者もいて、次の間に置かれた幾十振とも知れぬ刀が海波のように並んでいたという。

 後に老中になり、寛政の改革を行うことになる松平定信も、若い頃に御機嫌うかがいにきていたという。
 が、彼は意次から嫌われていたため、なかなか贈賄はうまくいかなかったらしい。
「無礼者!」
「余のカネが受け取れないっていうのか!」
「おまえんちに馬を突っ込ませてやるぞ!」
「おまえにも娘がいるだろう! 娘がどうなってもいいのか!」
 などと定信がキレていたかどうかは定かではない。

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