2.ほんまもんの本間

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子ども手当
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3.佐渡のサド
4.天の川の下で

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現在の佐渡(新潟県佐渡市)周辺

 日野阿新丸は、父・日野資朝を救うために佐渡へ向かった。
 お供には聖護院
(しょうごいん。京都市左京区)僧・大膳坊賢栄(だいぜんぼうけんえい)と、長年仕えている中間(ちゅうげん)を一人連れていった。
 徒歩で越前敦賀
(つるが。福井県敦賀市)へ行き(あるいは琵琶湖を船で)、敦賀からは商人船に乗せてもらって佐渡に渡ったのである。

 佐渡守護代・本間山城入道の館は現在の妙宣寺付近にあったとされている。
 阿新丸が館の中門で立っていると、若い武士が声をかけてきた。
「迷子?」
「いいえ」
 若い武士は賢栄と中間を見て勝手に推測した。
「わかった!勧進
(かんじん。募金)でしょ?。へー、子供をダシに使ってるのー。そりゃむさいオヤジが集めるより、たくさんカネが集まりますよねー。考えましたねー。でも、そんなちゃちな手は、この辺の者は引っかかりませんよー」
「違います!私は日野資朝の次男の阿新丸です!私は父に会いに来ただけです!」
「あ、そうだったの。ほー、日野殿の。まあまあ、はるばる京都から。――あ、拙者は山城入道の子の本間三郎だ」
 阿新丸は門の中へ通された。
 が、賢栄と中間は三郎によって外へおっぽり出された。
 二人はぶうたれた。
「拙僧も入りたい〜」
「のどが渇きました。白湯
(さゆ)ぐらい出してくださーい」
「やなこった。悪く思うな。念のためだ。物騒な連中は外で待ってな」
「そんな〜」
「何も悪いことしようと思ってないのに〜」

 一方、阿新丸は山城入道が出迎えていた。
「よーこそ、罪人の御曹司
(おんぞうし)
 阿新丸は平伏して懇願した。
「お願いです!父はどこですか?もうずいぶん会っていないんです!会わせてください!」
「会わせるわけはいかぬ」
「なぜです?」
「わしは幕府からお前の父親を預かっているだけじゃ。幕府からお前の父親を誰にも会わせるなと命令されている」
「私は日野資朝の実の子なんですよっ!」
「例外はない」
「じゃあ、幕府には内緒で会わせて下さい!」
「ダメだ。ばれればわしの首が飛ぶ」
「誰にも言いませんから〜」
「壁に耳あり障子に目あり」
「そんなに気になるなら、幕府を裏切って帝の味方になればいいじゃないですかっ!あなたを帝側に勧誘するのも、ここに来た目的の一つなんです!」
「バカなことを言うなっ!」
 山城入道は思わず立ち上がって怒鳴った。
 阿新丸はムッとして座り込んだ。
「そんなら私は父と会わせてくれるまで、ずっとずーっとこの館にいさせていただきますっ」
「いいぞ」
 山城入道は困っていなかった。かえってうれしそうにニヤついた。
「それは結構なこと。どうぞごゆっくり〜。へっへっへ」
 山城入道が庭を指した。
「そこに持仏堂がある。それをお前の部屋にしてやる。寝泊りはそこでするがよい」
 阿新丸は拍子抜けしたが、願いがかなえられない以上、そのままい続けるしかなかった。

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