2.男くらふ姫君

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SMAP解散と世界情勢
1.虫めづる姫君
2.男くらふ姫君

 数日後、右馬佐は再びバレバレの女装をして変態な姫君を見に行った。
 また按察使の大納言の留守中に邸内に忍び込み、立蔀の陰に隠れたのである。
 すると、どこからともなく香ばしい匂いがしてきた。
(なんだ?ごはん中か?)
 変態な姫君の声が聞こえてきた。
「かわいいわ〜。あんまりかわいいんで、食べちゃいたいくらい」
 ケラ男の声も聞こえてきた。
「食べてもいいんですよ」
「姫、いっただきまーす」
「どうぞどうぞ」
 パクパク!クネクネ!
「うーん、くせがあるけどおいしいわー」
(何を食べているんだろう?)
 右馬佐の疑問はすぐに解けた。
 ケラ男が教えてくれたのである。
「うめえ!最高だな、幼虫は!ナマもいいけど、焼くと外側はカリッとして、内側はドロッと濃厚になるんだな」
(ヨウチュウ!?)
 ヒキ麻呂とやらの声も聞こえたきた。
「姫様。イナゴもおいしいですよ」
「うん、いけるわね」
「ハチノコもありますぜ。これ食べると元気が出るんですよ〜」
「元気になってどうするつもり?」
「またまた〜」
「たまたま〜」
「わはははは!」
「もしもし〜」
「しもしも〜」
「きゃひひひひ!」
 右馬佐は完全に冷めた。
(ダメだ!鬼畜生だ!姫様は全然優しくなんかなかった!)
 とっとと帰ることにした。
(姫もこいつらもただの変態だった!)

 その時、
「のぞきはいけないんだぞ」
 と、背後で女の声がした。
「え?」
 右馬佐は変態な姫君に回り込まれたと思って振り向いたが、後ろで立っていたのは隣家のまっとうな姫君であった。
「はいはい、もう帰りますんで」
 右馬佐はすり抜けようとしたが、まっとうな姫君が立ちはだかって通してくれなかった。
 彼女は瞳をうるませると、ハエのようにまとわりついた。
「あら、よく見るといい男〜」
「へ?」
「かわいいわ〜」
「……」
「あんまりかわいいんで、食べちゃいたいくらい」
「!」
「姫、いっただきまーす」
 まっとうな姫君はヘビのように脱皮した。
 ヒルのように吸い付いた。
 ナメクジのようにはい回った。
「うわあ!変態がここにもいた!」
 右馬佐は逃げようとした。
 でも、まっとうな姫君がカマキリのように離してくれなかった。
「どうして嫌がるの?ゼニが欲しいの?いっぱいあげるから安心して。カネも実力のうちだぞ」
 パクパク!クネクネ!
「やめろー!」
 右馬佐はまっとうな姫君を突き飛ばして逃走した。
 すると、すべてを監視していた貫禄あるオバチャンが出てきて、部下たちに命じた。
「お嬢様のオトコを逃がすな!行けっ!門番三人組!」

[2016年12月末日執筆]
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