1.やられたらやり返す | ||||||||||||||
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ザアザア。しとしと。ぴっちゃんちゃん。
降り続く雨音の中に、妙な物音が交じっていた。
「こけ!こけ!」
ばりばり。
「ぎゃーこっこ!」
むしゃむしゃ。
「ワオーン(ニワトリ、うめえ)!」
ずりずり、べろんべろん〜。
「オンオーン(うますぎだぜー)!」
ぐちゃぐちゃ。げっぷぅ〜。
「ハア、ハア(また、来よっ)」
おばあさんは目覚めた。
眠っていたおじいさんをゆすった。
「おじいさん、おじいさん。何か鳥小屋の方が騒がしいですよっ」
おじいさんが半分眠りながら言った。
「ほっとけ。若者たちの夜のジャマをするな」
「そうですかね?」
「そうだよ。鳥鎌メッシ(とりかまめっし)と国光恵子(こっこうけいこ)と戸坂ジャン(とさかじゃん)と鳥羽沙紀(とばさき)が乳繰り合っているんだろう」
飼っているニワトリ四羽の名前である。
「それならいいですけど」
「ええのう、若いモンは〜」
翌朝、鳥小屋を見に行ったおじいさんは、そうではなかったことに気が付いた。
ジャンと沙紀が小屋の隅でブルブル震えていたのである。
「どうした?」
おじいさんは不思議がった。
「そういえば、メッシと恵子はどこに行った?」
小屋の中にはいなかった。
網に穴が開いていた。
「逃げたか?」
そうではなかった。
おじいさんは足元に羽根が散乱しているのに気付くと、その中に落ちていたものを拾って絶叫した。
「ギャー!メッシと恵子が骨片になってるー!」
そこへおばあさんが駆けつけ、さらなる悲報をもたらした。
「おじいさん!馬小屋に二頭いた子馬のうち一頭がいません!」
おじいさんはワナワナと震えた。
「おのれ!誰がやった?」
おばあさんはおじいさんよりは冷静であった。
「どうやら馬は泥棒に、ニワトリはオオカミにやられたようですね」
おじいさんはメラメラと立ち上がった。
「このままではすまさない!子馬もニワトリもまだ残っている。ヤツらは再びやって来る!やられたらやり返す!倍返しだ!」