2.泥棒とオオカミに倍返し | ||||||||||||||
ホーム>バックナンバー2013>2.泥棒とオオカミに倍返し
|
ザアザア。しとしと。ぴっちゃんちゃん。
また、雨の夜がやって来た。
「おじいさん、嫌な雨ですね」
おじいさんは思い出した。
「嫌な雨だ。こんなような夜に、かわいそうに子馬と鳥釜メッシと国光恵子が旅立っていった……。ううっ!」
おじいさんは、たびたび泣いた。
涙をぬぐったかと思ったら、顔を上げてフッフッと笑った。
「こんな夜は、ヤツらは再びやって来る!」
おじいさんは周りを見回した。
土間を移動するオオカミ影と、天井裏を移動する人影が見えた。
おじいさんはニヤリと笑った。
「案外、もう来てたりして」
おばあさんは身震いした。
「怖いですね〜」
おじいさんが声を大きくした。
「確かに泥棒やオオカミは怖い。しかし、この世の中にはもっと怖いものがある」
「何ですかそれは?」
「『ふるやのもり』だよ」
おばあさんは納得した。
「ああ、確かにあれほど怖いものはないですよね〜」
「そうだよ!『ふるやのもり』の恐ろしさは、泥棒やオオカミごときの比ではないわい!」
これには天井裏にいた泥棒がドキリとした。
(なんだって?泥棒やオオカミより怖いものがあるって?)
土間にいたオオカミも首をかしげた。
(泥棒やオオカミより怖い、とんでもない怪物ってなんだ?)
考えても思いつかなかった。
おばあさんは話を続けた。
「確か、『ふるやのもり』って、こんなような雨の夜に出るんですよね?」
おじいさんは声を張り上げた。
「ああ、今夜あたり出るだろう!間違いなく出るだろう!早く出てきて、泥棒やオオカミにも『ふるやのもり』の本当の恐ろしさを味わわせてやるがいい!」
泥棒とオオカミは恐怖した。
「いつごろ来ますかね?」
「案外、もう近くまで来てるんじゃないかな?『ふるやのもり』がなっ!」
泥棒はびびった。
(おいおい、そんなもん来られたらたまらない!)
逃げようとしたが、焦って足を滑らせ、
ばこっ!
と、天井裏の板が抜けてしまった。
(やば!)
バリバリ!どっすーん!
泥棒は落ちた。
落ちたところは土間であった。
ちょうど土間にいたオオカミに背中に落下したのである。
オオカミは仰天した。
(ギャー!怪物「ふるやのもり」が出たぁー!)
泥棒にしがみつかれたオオカミは、恐怖絶頂に達した。
(なんてこった!完全に捕まっちまったぜー!)
一方、泥棒も頭がこんがらがっていた。
(なんだこの毛むくじゃらな生き物は?そうだ!これこそ「ふるやのもり」に違いない!怖ぇぇー!)
確信して逃げようとしたが、目が合えば即座に食べられそうな気がしたため、合わないように背中によけいにしがみついてやった。
それをまたオオカミが勘違いした。
(うわあ!「ふるやのもり」がオレを絞め殺そうとしてるぜー!)
オオカミは駆け出した。
土間を突破し、
バーン!
玄関の戸もぶち破って野原を爆走した。
それでも必死で泥棒はしがみついていた。
(何て乱暴なヤツだ!振り落して食べようとする気だが、そうはさせねえ!)
泥棒はますます強くオオカミにしがみついた。
オオカミは泣きそうでチビリそうになった。
(早く振り落さなければ、絞め殺されてしまうぜー!)
オオカミはジグザグ走行や急ブレーキ、ドリフト走行やロデオ殺法など思いつく限りの手を使って振り落しにかかった。
さすがにこれには泥棒も耐えられなかった。
「あれー!」
ついに手を放したのである。
泥棒はちょうど近くにあった洞穴に落ちていった。
ひゅーん、どすん!
オオカミは歓喜した。
「ウォッウォーン(やったー)!」
後も見ずに猛然と走り去っていった。