★強欲非情! 傲慢至極! 沈む夕日も上げてやる!?
 〜 金持ち一夜で大没落! 伏見稲荷大社創始伝説!!

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日本餅史
1.強欲な長者
2.川水の代償
3.禁断の行為

 餅(もち)は「晴れの日(めでたい日)」の食べ物である。
 正月三が日はもちろん、鏡開き
(一月十一日頃)のお汁粉、大寒(一月二十日頃)の寒餅、節分(二月三日頃)の大福、ひな祭り(三月三日)の菱(ひし)餅・桜餅・草餅、彼岸(春分・秋分の日頃)のおはぎ(牡丹餅)、端午(五月五日)の粽(ちまき)・柏(かしわ)餅、七夕(七月七日)の七夕餅(※タナボタ餅ではない)、土用(七月下旬頃)の土用餅、十月亥日の亥の子(いのこ)餅などなど、日本人はことあるごとに餅を食べる。

 餅がいつ頃から食べられ始めたかは定かではない。
 稲作伝来以後に米の餅は伝えられたが、それ以前にも粟
(あわ)餅や黍(きび)餅などがあった。

「モチ」という音の語源は「モチイイ(粘ること)」だという。
 また、「持ち」歩きできるからとか、「望月
(もちづき。満月)」に形が似ているからともいわれている(「2003年9月号 満月味」参照)

 餅という定義は曖昧(あいまい)である。
 中国語の「餅
(ピン)」は小麦加工食品を指すが、日本では主に米加工製品を指す。
 また、類似品である「団子
(だんご)」との区別が明確ではない。
 一般的には糯米
(もちまい)から作ったものを餅と呼び、粳(うるち)米粉から作ったものを団子と区別するが、例外も多い。

 奈良時代、餅は丸くて平たいのが一般的であった。
 円形は生命の根源であり
(心臓を表すという)、神聖なものとされ、刃物で切ることすら忌んだ。
 で、固い餅はがんばってちぎるか、槌
(つち)でたたき割るか、歯で食いちぎって食べたわけである。

 平安時代から、餅は正月飾りに用いられるようになった。
 餅鏡
(もちいかがみ)、いわゆる鏡餅の登場である。
 また、日本最古の餅菓子・椿餅
(つばいもちい・つばきもち)もこの時代に現れた。
 椿の葉二枚に甘い餅をはさんだものであるが、砂糖ではなく、甘葛
(あまずら。アマチャヅルの汁を煮詰めた甘味料)で甘味を付けたものであった。

 もう一つ、「お年玉」もこの頃横行し始めた。
 が、当時は現代のようなゼニではなく、餅であった。
「はい、お年玉だよ」
「わーい、モチだー! ありがとー」
 それが当たり前だったのである。
 だから現代でもゼニを出したくない大人は、子供にせがまれたらこうしてあげよう。
「今年は本当のお年玉をあげるよ」
「本当のお年玉?」
「はい、本当のお年玉!」
「モチじゃーん。ケチ〜」
 嫌われること請け合いである。

 鎌倉室町時代、餅は酒の肴(さかな)として好まれ、安土桃山〜現代までに全国各地に名物餅が誕生した。

 ・赤福餅(小豆。三重県伊勢市)
 ・あこや餅
(小豆。引千切)
 ・あぶり餅(黄粉味噌。京都市)
 ・安倍川餅
(あべかわもち。黄粉。阿部川餅。静岡県)
 ・粟餅
(アワ。京都市)
 ・あんころ餅
(小豆。京都市・金沢市など)
 
・糸切餅(滋賀県多賀町・和歌山市)
 ・姥が餅
(うばがもち。小豆。滋賀県草津市)
 ・鶯餅
(うぐいすもち)
 ・鶉餅
(うずらもち)
 ・梅ヶ枝餅
(小豆。福岡県太宰府市)
 ・御福餅
(おふくもち。伊勢市)
 ・鹿の子餅(かのこもち)
 ・からめ餅
(盛岡市)
 ・吉備餅
(きびもち。黍団子。岡山市)
 ・行者餅
(ぎょうじゃもち。京都市)
 ・銀杏餅
(ぎんなんもち)
 ・金竜山浅草餅
(東京都台東区)
 ・葛餅
(くずもち。東京都江東区・川崎市など)
 ・栗餅
(くりもち)
 ・胡桃餅
(くるみもち。秋田県など)
 ・芥子餅
(けしもち)
 ・五平餅
(ごへいもち。味噌。長野県・岐阜県など)
 ・胡麻餅
(ごまもち)
 ・笹子餅
(山梨県笹子峠)
 ・笹餅
(花餅)
 ・沙糖餅
(さとうもち)
 ・早苗餅
(さなえもち)
 ・算木餅
(さんぎもち)
 ・舌鼓
(小豆羽二重。山口市)
 ・しょうゆ餅
(愛媛県など)
 ・信玄餅
(しんげんもち。黒蜜。山梨県)
 ・神代餅
(伊勢市)
 ・ずんだ餅
(枝豆。宮城県)
 ・太閤出世餅
(たいこうしゅっせもち。伊勢市)
 ・大福餅
 ・大仏餅
(京阪地方)
 ・卵餅
 ・力餅
(大津市など)
 ・稚児餅
(ちごもち。京都市)
 ・長五郎餅
(小豆。京都市)
 ・橡餅
(とちもち。岐阜県・埼玉県など)
 ・生八ツ橋
(なまやつはし。京都市)
 ・なが餅
(三重県四日市市)
 ・二軒茶屋餅
(小豆+黄粉。伊勢市)
 ・肉桂餅
(肉桂。大阪府など)
 ・走井餅
(はしいもち。大津市)
 ・柱餅
(長崎市)
 ・羽二重餅
(はぶたえもち。福井市)
 ・菱葩餅
(ひしはなびらもち。味噌あん+ゴボウ。京都市)
 ・ほうおう餅
(石川県)
 ・法螺貝餅
(ほらがいもち)
 ・麦代餅
(むぎでもち)
 ・雪餅
 ・柚餅子
(ゆべし。ユズ+味噌。福島県郡山市など)
 ・蕨餅
(わらびもち。奈良市など。※ワラビーの肉は不使用)

 というわけで今回はめでたい餅とめでたい長者の物語である(没落しますが……)
『万葉緯
(まんようい。今井似閑編)』の「山城国風土記逸文(稲荷大社創立伝説)」や『豊後国風土記』にある「餅の的」説話の真相を勝手に想像、こんな物語を創造してみました。

「ああ、知ってる知ってる。餅が鳥になって飛び去ってしまう話だろう」
 御存知の方もおられるでしょうが、この物語ではそのような非現実的なことは起こりませんので、あしからず。

[2006年12月末日執筆]
参考文献はコチラ

「伏見稲荷創始伝説」登場人物

【秦伊侶具】はたのいろぐ(いろこ)。山背国の大富豪。朝日長者。

【タギ姫】伊侶具の長女。宗像三女神から採った仮名。
【タゴ姫】伊侶具の次女。宗像三女神から採った仮名。
【イチ姫】伊侶具の三女。宗像三女神から採った仮名。

【百姓たち】
【知恵を貸す者】
【古参の百姓】

【賀茂氏の当主】伊侶具のライバル。

【百姓K】伊侶具の使用人。

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