1. もうけ話

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南蛮の没落
1.もうけ話
2.危険な香り
3.交換条件

 かつて海には国境はなかった。
 日本人も朝鮮人も中国人もポルトガル人もスペイン人もその他外国人も自由に往来し、交易していた
(密貿易だが)
 時にはケンカになり、武力で事を解決する荒くれ者もいた。
 このうち、十六世紀に肥前平戸
(ひらど。長崎県平戸市)に本拠を置き、東シナ海を中心に暴れまわっていた最強のワル、多国籍密貿易商兼海賊集団を「後期倭寇」と呼ぶ。
「ナンカ、モウケ話、アル〜?」
 後期倭寇のボスは、
人・王直(おうちょく。五峰・汪直)
 平戸領主・松浦隆信
(まつらたかのぶ)から提供された豪邸で、日々ワイルドに暮らしていた。
「ございますとも。とっておきのもうけ話が」
 隆信は天文十年(1541)襲封。二年を有して家内のゴタゴタを治めたが、王直の武力や財力の後援があってのことであろう。
「ドンナ話?」
「はい。九州の南方に種子島
(鹿児島県西之表市ほか)という島がございます」
「ホウ」
「島を治めているのは種子島時尭
(「種子島氏系図」参照)。まだ十六歳の少年です」
 隆信の言葉に、王直の目が光った。
「フフン。金持チナ子供ハ商売相手トシテハ最適。南蛮菓子デモ売リニイクカ」
「いえいえ。菓子よりももっと高価なもの売りつけましょう。少年というものは、危険な香りが大好きなんですよ」
「危険トイエバ、鉄砲――」
「それですよ!」
 王直は笑いが込み上げてきた。
「ナルホド。鉄砲ナラベラボーニ高ク売レル。売ッタ後モ定期的ニ弾ヤ火薬モ売レル。長イ間、ウハウハガ続クッテコトダ」
「そうですよ!大もうけですよ!」
「オヌシ、ワルヨノー」
「あんたに言われたくはないです〜」

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