1.女おんねん | ||||||||||||||
ホーム>バックナンバー2010>1.女おんねん
|
男は女を物色していた。
妙齢の女が飲み屋にいた。
「あれだ」
男は店に入っていった。
女のそばに座り、酒を注文して女に勧めた。
「あん?」
女は酔っ払っていた。
「やさしくしたって、何にも出ないよ〜」
女は杯を差し出してきた。
男は心中「勝った!」と思った。
女はキューッと杯をあおった。
「ぷはー!おいしいわー」
分別はつく状態である。
「オトコと待ち合わせ?」
「やだねー。あたしは亭主もちだよ〜。げっぷぅ〜」
「人妻かよ」
「いちおー」
「いちおうね」
男は心中また「勝った!」と思った。間髪入れず攻めた。
「ふーん。君の亭主には君のほかにオンナがいるんだ〜」
人妻はズキッとなった。図星であった。
「そんな浮気な亭主とはスッパリ別れて、自由なオレとつき合わねえか?」
「はははーん!」
人妻は笑い飛ばした。
「やだよー。うちの亭主はカネは持ってるんだからさー」
「ふーん。金持ちなんだ」
男は心中「うひっ」と思った。それはそれで男にとってもよかった。
「これっきりなんて嫌だ。内緒でちょくちょく逢おうよ」
「あんた、うちの亭主に殺されるよ」
「もとよりそれは覚悟の上さ。ばれなきゃいいんだよ。君だっておもしろくないだろ?亭主がほかのオンナと遊んでいるのに自分だけ一人酒」
「まーね」
「オレだっておもしろくないよ。オレは君だけを好きなのに、君は浮気者の亭主が好きなんだ」
「え〜?なになに?今の、もう一回言ってぇ〜」
「オレだっておもしろくないよ」
「ちがう〜。そのあと〜」
「オレは君だけを好きなのに」
「いい!もう一回言って〜」
「オレは君だけを好きなのに」
「いい声〜。しぶいしぶい〜い!」
男は人妻を引っぱった。
「じゃ、続きは場所を変えてっ」
男は人妻を連れて店を出た。
キョロキョロと連れ込めそうな宿を探した。
夜風に当たって人妻は少し酔いがさめたようであった。
「あ!そろそろ亭主が帰ってくるわ。帰らなきゃ〜」
「チッ、もうおしまいかい」
「ウチ来る〜?」
「だって亭主が帰ってくるんだろ?」
「あした、もう少し早い時間なら、亭主はまだいないよ〜」
「ってことは、あしたの夜も君の亭主はお出かけかい?」
「うん。別のオンナのところに」
「別のオンナ?亭主のオンナって何人いるんだ?」
「十八人交代制で毎晩お出かけ〜」
「どんな亭主や!」
次の夜、男は人妻のウチを訪れた。
「こんばんは〜。怪しい者ですけど〜」
「あら、本当に来たの?」
「本当に来ました。はい、お土産。亭主は?」
「いないよ。丑三つ時ぐらいまでは」
「じゃ、今夜は亭主のことはスッパリ忘れて」
「そうしますか」
「ハーッハッハッハ!」
「ホーッホッホッホ!」
その夜、男は間男になった