1.女おんねん

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加藤一二三の伝説
1.女おんねん
2.ネコおんねん

 男は女を物色していた。
 妙齢の女が飲み屋にいた。
「あれだ」
 男は店に入っていった。
 女のそばに座り、酒を注文して女に勧めた。
「あん?」
 女は酔っ払っていた。
「やさしくしたって、何にも出ないよ〜」
 女は杯を差し出してきた。
 男は心中「勝った!」と思った。
 女はキューッと杯をあおった。
「ぷはー!おいしいわー」
 分別はつく状態である。
「オトコと待ち合わせ?」
「やだねー。あたしは亭主もちだよ〜。げっぷぅ〜」
「人妻かよ」
「いちおー」
「いちおうね」
 男は心中また「勝った!」と思った。間髪入れず攻めた。
「ふーん。君の亭主には君のほかにオンナがいるんだ〜」
 人妻はズキッとなった。図星であった。
「そんな浮気な亭主とはスッパリ別れて、自由なオレとつき合わねえか?」
「はははーん!」
 人妻は笑い飛ばした。
「やだよー。うちの亭主はカネは持ってるんだからさー」
「ふーん。金持ちなんだ」
 男は心中「うひっ」と思った。それはそれで男にとってもよかった。
「これっきりなんて嫌だ。内緒でちょくちょく逢おうよ」
「あんた、うちの亭主に殺されるよ」
「もとよりそれは覚悟の上さ。ばれなきゃいいんだよ。君だっておもしろくないだろ?亭主がほかのオンナと遊んでいるのに自分だけ一人酒」
「まーね」
「オレだっておもしろくないよ。オレは君だけを好きなのに、君は浮気者の亭主が好きなんだ」
「え〜?なになに?今の、もう一回言ってぇ〜」
「オレだっておもしろくないよ」
「ちがう〜。そのあと〜」
「オレは君だけを好きなのに」
「いい!もう一回言って〜」
「オレは君だけを好きなのに」
「いい声〜。しぶいしぶい〜い!」
 男は人妻を引っぱった。
「じゃ、続きは場所を変えてっ」

 男は人妻を連れて店を出た。
 キョロキョロと連れ込めそうな宿を探した。
 夜風に当たって人妻は少し酔いがさめたようであった。
「あ!そろそろ亭主が帰ってくるわ。帰らなきゃ〜」
「チッ、もうおしまいかい」
「ウチ来る〜?」
「だって亭主が帰ってくるんだろ?」
「あした、もう少し早い時間なら、亭主はまだいないよ〜」
「ってことは、あしたの夜も君の亭主はお出かけかい?」
「うん。別のオンナのところに」
「別のオンナ?亭主のオンナって何人いるんだ?」
「十八人交代制で毎晩お出かけ〜」
「どんな亭主や!」

 次の夜、男は人妻のウチを訪れた。
「こんばんは〜。怪しい者ですけど〜」
「あら、本当に来たの?」
「本当に来ました。はい、お土産。亭主は?」
「いないよ。丑三つ時ぐらいまでは」
「じゃ、今夜は亭主のことはスッパリ忘れて」
「そうしますか」
「ハーッハッハッハ!」
「ホーッホッホッホ!」
 その夜、男は間男になった

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