★ 山川異域!風月同天!長屋王の呪い鎮まらず!! 〜 古今中国人感動!時空を超えた超絶漢詩!! |
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ホーム>バックナンバー2020>令和二年3月号(通算221号)呪い味 山川異域風月同天寄諸仏子共結来縁
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山川異域
風月同天
寄諸仏子
共結来縁
(山や川は国によって異なりますが、仰いでいる風や月は同じなんです。同胞に贈ります。みんな一つになろうではありませんか!)
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新型コロナウイルス COVID 山川異域 長屋王 鑑真 |
改めて、すごい漢詩である。
静と動の対比が見事である。
時間と空間の表現も壮大である。
そして、わずか十六文字の中に、渾身(こんしん)の思いを込めている。
まるで誰もが足を止める選挙演説のようである。
自由主義者の主張のようである。
社会主義者の叫びのようでもある。
オリンピックのスローガンのようでもある。
しかも、この世界平和、人類平等を願ったような漢詩は、今の時代のものではない。
なんと、千三百年以上も前のものなのである。
差別が常套化(じょうとうか)していた律令時代に、天皇にもなりかけた特権階級の長屋王(「令和味」「天皇家系図」参照)が作ったとみられる漢詩なのである。
もちろん、彼自身がこれを作ったという確証はない。
どちらにせよ、彼らしい詩には違いない。
それにしても不思議である。
国によって山河が異なるのはわかる。
しかしこの時代になぜ、風や月は同じだとわかったのであろうか?
遣唐使の話を聞けば、月は同じだとわかったかもしれない。
それでも、人工衛星も天気図もなかった昔に、風が同じだとどうやって知り得たのであろうか?
霊亀三年(717)、長屋王はこの漢詩を刺繍(ししゅう)した袈裟(けさ)千着を遣唐使に託して唐の僧たちに贈った。
「すごい漢詩が刺繍された袈裟が坊さんたちに配られたそうな」
「日本の王子が贈ってくれたそうな」
「え? 倭国に漢詩を詠める人がいるの?」
「山川異域! 風月同天! 寄諸仏子! 共結来縁!」
「いいねー!」
さぞや僧たちの間で話題になったのであろう。
清代に編集された唐代詩集『全唐詩(ぜんとうし。彭定求編)』の「繍袈裟衣緑」にも収録されているという。
[2020年2月末日執筆]
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