2.早世!藤原時平!!

ホーム>バックナンバー2010>2.早世!藤原時平(ふじわらのときひら)!!

陸山会事件
1.変死!藤原菅根!!
2.早世!藤原時平!!
3.溺死!源 光 !!
4.再死!三善清行!!
5.蘇生!源 公忠!!
6.悶死!醍醐天皇!!

「藤原菅根卿(きょう)が雷に打たれて死んだそうな」
「やっぱり天神になった菅公のたたりに違いない!」
「そや!前に藤原氏氏寺興福寺が燃えたのもたたりのせいや!」
「くわばらくわばら!」
 都の人々はますますおびえた。

 魔の手は藤原時平にも訪れた。
 延喜九年(909)三月に、にわかに発病して寝付いてしまった。
 時平は起き上がろうとした。
「私にはまだやることがある!延喜式を完成させなければならないし、荘園整理も進めなければならないし、天皇外戚にもならなければならないし、摂政関白にもならなければならない!」
 時平の祖父・藤原良房摂政になり、父・藤原基経関白になった
(「藤原北家系図」参照)
 なのに自分の代で摂関政治を途切れさせたくはなかった。
 でも、力が入らなかった。
「浄蔵
(じょうぞう)を呼べ」
 浄蔵も高名な天台宗僧である。
 大儒・三善清行の子で
(「三善氏系図」参照)加持祈祷の名人であり、後には尊意らとともに平将門(「桓武平氏系図」参照)の調伏も行っている。
「お呼びでしょうか?」
 時平がフウフウ頼んだ。
「私に取り憑
(つ)いている悪霊を取り払ってほしい」
「承知いたしました」
 浄蔵は手で印を結び、真言
(しんごん)を唱え、一心に祈り始めた。
「うおぉぉ〜」
 すると、時平の様子がおかしくなった。
 顔が赤らみ、アメーバのようにモゾモゾ変形してきた。
「悪霊め、正体を現したな!病魔退散!」
「うぐぐぐぐ〜」
 と、時平の両耳から一匹ずつヘビが顔を出して口をきいた。
(邪魔ヲスルナ!我ハ不倶戴天
(フグタイテン)ノ敵(カタキ)ヲ滅ッセントシテイルノダ!去ラネバ貴様ラ三善一族モ皆殺シニスルゾッ!)
「ああ、生前の菅公とは似ても似つかぬ変わりよう!敵憎さに鬼に魂を売り飛ばしたか!」
(ホザケーッ!)
「とどめだーっ!」
 浄蔵は渾身
(こんしん)の気合を込めて金剛杵(こんごうしょ)を振り下ろそうとした。
「やめい!浄蔵!」
 金剛杵をつかんで止めたのは清行
「やめるんだ!それ以上やるとわが一族は皆殺しにされる!」
「止めなさるな父上!あともう一息なのです!」
「お前なんぞに勝てる相手ではない!家を滅ぼしてもよいのか!」
 ガララン。
 浄蔵は金剛杵を落とした。
 清行は浄蔵を連れてそそくさと退室した。
「見捨てるのか!」
 時平は叫び、ヘビは喜んだ。
(サスガハ清行、聞キ分ケガヨイ。デハ、エンリョナク」
 ぐびり!
「ギャーン!」
 時平は死んだ。
 時に延喜九年四月四日。享年三十九。

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