3.安倍安仁

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平昌五輪
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3.安倍安仁
4.滋岳川人

大納言卿」
「何じゃな?」
「無念です」
「何のことかのう?」
「『続日本後紀』の編修員の件ですが、大納言卿を推挙し損ないました」
「そうかい。それは残念だ。わしももう古希に近い。人生最後の大仕事にしようと考えておったのに」
摂政の怒りは予想以上でした」
承和の変など記事の不備を訂正するつもりはないと?」
「そういうことです。それだけではありません。誤記を指摘したのは誰だと詮索し始めたのです」
「わしの名を出したのか?」
「いえいえ。とても出せる権幕ではありませんでした。摂政はその人を殺そうとしていますから」
「ファハハ!大げさな」
「大げさではありません!摂政は変をひっくり返そうとした阿保親王を監禁して殺したのです!惟喬
(これたか)親王を立てようとした先帝まで暗殺したのです!大納言卿を消すことぐらい、罪の意識ナシで可能でしょう」
「……。怖いのう!」
「大丈夫です。卿の身辺警護を滋岳川人
(しげおかのかわひと)先生に依頼しておきました」
「おお!あの最強とうわさされている陰陽師だな?」
「そうです。長年陰陽博士を務めている第一人者です。これでいくら摂政が名うての陰陽師たちを雇って卿を呪わせたとしても、呪い殺されることはなくなるでしょう」
「頼もしい限りじゃ」

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