ホーム>バックナンバー2002>七十年前の小泉純一郎(こいずみじゅんいちろう)

　相変わらず不況である。年初めに寒波が続々とやって来て、身も懐もゾクゾクである。もうじき花粉症の方々があちこちで「フキョウ！フキョウ！」とくしゃみを連発し、ウグイスまでもが「フキョーキョ！フキョーキョ！」と、騒ぎ出すことであろう。

　そもそも平成大不況は平成三年（1991）から始まった。十年超の長い長い不況である。もうそろそろ終わるだろう、もう今年で終わるだろう、毎年毎年そう思ってきた。しかし一向に景気が上向く気配はない。
　昨年も大手スーパー「マイカル」が、「ま、いーか」と倒産、連日のように地方金融機関の破綻(はたん)が相次いだ。まったく、「信用金庫」でなく「信用できんこ」である。年末のお楽しみ、ボーナスはアップするどころか、そんなもんなくて生活のほうがアップアップ。株は底値をのた打ち回っていて手を出せる状態ではないし、競馬の有馬記念で運試しすれば、かすりもせずに「ありゃまー！」と後悔。一等の当選確率が五百万分の一といわれている年末ジャンボ宝くじ売り場の前を横目で通り過ぎ、失業率が五・五パーセントを超えたとのニュースを耳にする。

　平成十三年(2001)四月二十六日に発足した小泉純一郎内閣。
　ライオンハットで人気者の「シシロー」こと小泉純一郎首相、「伏魔殿」との仁義なきバトルにお疲れ気味の田中真紀子(たなかまきこ)外相、「塩ジイ(塩川正十郎財相)」「坂ジイ(坂口力厚労相)」「ヤワラちゃん(竹中平蔵経財相)」など、ほのぼのとした個性豊かな脇役たち、「抵抗勢力」なるいぶし銀の敵役までそろえてお茶の間を席巻、鳩山由紀夫(はとやまゆきお。「友愛味」等参照)民主党代表をして「ワイドショー内閣」と呼ばせた。

　なかでも大将・コイズミの人気はすさまじく、支持率は一時百パーセントにも迫る勢い。何かのたまえば話題になり、昨年の流行語大賞もかっさらっていった。
　森喜朗(もりよしろう)前首相のときと違って、行くところ行くところ人の波、歓声・悲鳴・嬌声(きょうせい)・声援がわき上がり、写真集を出せば、オッサンとしては異例のバカ売れ。肝心の政策のほうは、賛否両論あろうが、ぼちぼちやっているのではないだろうか？
　一月末、首相は田中外相を辞めさせざるを得なくなった。「臭い物にはフタ」の感があるが、ほかにいい手が思いつかなかったのであろう。とにかく、これで抵抗勢力の第一目標は達成させられたわけであり、内閣からしてみれば、これからが本当の正念場となろう。

　今から約七十年前、現在と同じような状況下で首相に推されてしまった男がいた。
　今回はそんな男の物語である。

[2002年1月末日執筆]
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「浜口雄幸」登場人物　

【浜口雄幸】はまぐちおさち。首相・立憲民政党総裁・衆院議員。

【井上準之助】いのうえじゅんのすけ。蔵相。浜口の側近。金解禁を断行。

【幣原喜重郎】しではらきじゅうろう。外相。幣原外交を展開。後に首相。

【若槻礼次郎】わかつきれいじろう。元首相。ロンドン海軍軍縮会議主席全権。
【岡田啓介】おかだけいすけ。軍事参議官。後に首相。海軍条約派の巨頭。

【中島弥団治】なかじまやだんじ。秘書官。浜口の側近。
【鈴木富士弥】すずきふじや。書記官長。浜口の側近。

【ナショナルシティ銀行の幹部】

【佐郷屋留雄】さごうやとめお。愛国社員。

【犬養　毅】いぬかいつよし。立憲政友会総裁。後に首相。
【加藤寛治】かとうひろはる。軍令部長。海軍艦隊派の首魁。