★ こりゃあ坊さん

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日馬富士暴行引退
★ こりゃあ坊さん

 平安の都に貧乏な母子がいた。
 坊やがクニクニ甘えた。
「かかぁ〜」
「なんだい?」
「ごはんたべたいよ〜」
「うちはビンボーだから、ないよ」
「ヤダヤダー!おなかがごはんってさけんでいるよー!」
「我がまま言ってると、アイツラが来るわよ」
「え?だれがくるの〜?」
 だんだん、すかぽんたん。
 だんだん、すかぽんたん。
「ほら、来た」
「え?なにがきたの〜?」
 だんだん、すかぽんたん。
 だんだん、すかぽんたん。
「ほらほら」
「なになに?なんかへんなオトがするよぅ〜」
「だから、濃いヤツが一歩一歩近づいてくるのよ」
「なになに〜?こいヤツてなに〜?こわい〜」
 だんだん、すかぽんたん。
 だんだん、すかぽんたん。
 ガラガラララ!
 勢いよく玄関の戸が開いたかと思ったら、濃い乞食僧がイケメン小坊主を両脇に従えて登場した。
「売れ残り、ありがとう。食べ残し、ありがとう。腐りかけ、ありがとう。みんな!拾ったもの恵んでくれて、ありがとう!あー、人間に生まれてよかった!」
「へ?」
 坊やは面食らった。
「このヒト、だれだれ?」
 すると、乞食僧は自己紹介した。
「どうも、効率的な仕事ぶり、充実した私生活、こりゃあ坊さんです」
「?」
 自己紹介にはなっていなかった。
「ビンボーでさみしい働き坊やのみんな、自分から『狩り』に出ないと、ごはんなんてもらえないと思ってない?」
「??」
「じゃあ質問です!花は自分からミツバチを探しに行きますか?」
「???」
「探さない。待つの♪」
「!」
「仏様に祈りなさい。ごはんは自然とやって来るから!」
「くるもんか!」
 坊やは反抗した。
「だって、ホトケサマなんていないよ!」
「ふーん、根拠は?」
「しらないのかい?オシャカサマはもうずっとむかしにしんじゃってるんだよ!」
「え?仏様がいなくてごはんが食べられない?」
「うん」
「ダメ坊や!」
「うるせえな」
「じゃあ質問です!のみくだしたごはんを、いつまでもいつまでもかみ続けられますか?」
「できるわけねーだろ!」
「そうね。あたらしいごはん、食べたくない?」
「たべてーよ!さっきからほしがってるじゃねーか!」
「仏様はごはんといっしょ。いなくなったらまたあたらしい仏様を呼べばいい。お釈迦様がいなくなっても、弥勒
(みろく)様がやって来るのよ。お釈迦様が死んだ後、弥勒様は何年たったらやって来ると思う?」
「しらねーよ!」
「五十六億」
「!」
「あと七千万」
「!!」
「待つの♪」
「待てるかーい!」
「弥勒様を待てない人には、阿弥陀
(あみだ)様。私が布教している浄土教の教えがお勧めよ。この冊子をどうぞ」
「これがコンタンかい!」
「今、入信しますと、念仏を唱えるたびに口からポツポツ小仏を出せるようになれます」
「だせるかーいっ!!」

[2017年11月末日執筆]
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