2.がっかりだわ上杉謙信 | ||||||||||||||
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上杉二十五将 |
長尾政景(新五郎・越前守) 長尾景秋(権四郎) 宇佐美定行(定満・駿河守) 直江景綱(実綱・大和守) 本庄実乃(実仍・慶秀・宗緩・美作守) 本庄繁長(越前守・大和守) 新津義門(勝資・丹後守) 金津義舊(新兵衛尉) 斎藤朝信(下野守) 柿崎景家(和泉守) 北条景広(長国・丹後守) 安田能元(順易・上総介) 甘粕景継(清長・備後守) 色部長実(長真・修理大夫) 中条藤資(弾正左衛門尉・越前守) 杉原親憲(水原親憲・常陸介) 加地春綱(安芸守) 小国頼久(大国頼久・修理亮) 竹股朝綱(慶綱・三河守) 千坂清風(対馬守) 吉江定仲(中務丞) 志田義分(義秀・修理亮) 岩井信能(民部少輔・備中守) 山本寺季長(勝蔵) 高梨頼包(源三郎) |
六月の終わりにも春日山城で軍議が開かれた。
軍師で越後琵琶島(びわじま。新潟県柏崎市)城主の宇佐美定行(うさみさだゆき。定満)が切り出した。
「まずは駿・甲・相三国同盟に対抗するため、越前の朝倉義景(あさくらよしかげ)、安房の里見義尭(さとみよしたか)らと結ぶことでございまする」
「『遠交近攻』か」
長尾景虎は納得したが、大熊朝秀が不安がった。
「朝倉義景は愚将と聞いているが……(「2003年2月号 大雪味」参照)」
宇佐美が付け足した。
「義景は存じぬが、戦の指揮はすべて後見人の朝倉宗滴(そうてき。教景)が執る。宗滴は名将じゃ」
が、大熊はなお不安がった。
「里見は北条氏康にヒーヒー言わされているではないか。そんなもんが頼りになるのか?」
「結ばないよりはマシじゃ」
直江実綱が言い、越後栃尾(とちお。新潟県栃尾市)城主・本庄実乃(ほんじょうさねより。実仍)がかんぐった。
「それとも大熊殿。何か我々が朝倉や里見と組むと都合の悪いことでもおありか?」
「そんなことは……」
言葉に詰まる大熊を見て、北条高広が笑った。
「敵が増えると裏切りづらいってか」
「貴様!わしは敵の三国同盟と比べて見劣りすると申したいのだ!」
「とても勝てそうにないから裏切りたいと?」
そう笑ったのは越後坂戸(さかと。新潟県南魚沼市)城主・長尾政景(まさかげ)。
景虎の義兄で、後の出羽米沢(よねざわ。山形県米沢市)藩祖・上杉景勝の実父である。
大熊は逆襲に出た。
「政景殿。あんたのほうが怪しいんじゃないか?あんたには前科がある」
そうであった。かつて政景も景虎に対して謀反を起こし、景虎の姉・仙桃院(せんとういん)を妻にすることによって講和・臣従したのであった。というか、景虎と政景は父の代からの仇敵(きゅうてき)であった。
「フッ」
政景は笑うと、
ドカッ!
いきなり大熊に肘掛(ひじかけ)を投げぶつけた。
「イタッ!何しやがる!」
大熊は立ち上がると、刀の柄に手をかけた。
政景は仁王立ちになった。
「抜けるもんなら抜いてみろぉー!」
たまらず直江がしかりつけた。
「二人ともやめんか!御前であるぞっ!」
二人は不機嫌に退いた。
「殿、見苦しいところをお見せしました」
「いつものことではないか」
景虎はため息をつくと、何か思いついたように立ち上がった。
「そうだ!高野山へ行こう(「引籠味」参照)」
景虎は去っていった。
諸将はきょとんとした。
「え?なんだって?」
「どこへ行くって?」
「さあ。いつものように毘沙門堂におこもりじゃないの?」
景虎はそれっきり、なかなか帰ってこなかった。ぜんぜん帰ってこなかった。
諸将はざわめいた。
「いったいどこへ行かれたのだ?便所にしては長すぎるぞ」
「毘沙門堂にもおられないそうじゃ」
「そういえば、高野山って言われなかったか?」
「高野山?また上洛なさるのか?」