3.やっちまった上杉謙信

ホーム>バックナンバー2007>3.やっちまった上杉謙信     

安倍内閣→福田内閣
1.ぐちゃぐちゃ春日山城
2.がっかりだわ上杉謙信
3.やっちまった上杉謙信
4.めでたしです上杉謙信
 

 翌日、長尾景虎は登城しなかった。
 翌々日も姿を現さなかった。
 諸将は困惑した。
「いったいどこへ行かれたのじゃ?」
「殿を捜せー!」
「府中館
(関東管領・上杉憲政邸)にはおられないのか?」
「いらっしゃいませーん!どこにもおりませーん!」
「なぜだー!?」
「喧嘩ばっかしているおれたちに嫌気が差したのかぁー!」
「まさか、わしたちが一番嫌がることが隠れんぼだったなんてぇー!」

 そこへ越後柿崎(かきざき。上越市)城主・柿崎景家(かげいえ)が天室光育(てんしつこういく)を連れてやって来た。
「御坊がお話したいことがあると」
 天室光育は曹洞宗永平寺派の僧。元林泉寺
(りんせんじ。春日山。上越市)の住職で、景虎の幼少の頃からの仏道・軍学の師である。景虎の父・長尾為景(ためかげ)は彼が七歳のときに没しているので、以降の父親代わりでもあった。
景虎公の手紙を預かっておりますのじゃ」
「何!殿の!」
 天室光育は長尾政景に手紙を渡した。
 それを読んだ政景は呆然
(ぼうぜん)とした。
「どうなされた?」
「何が書いてあるのだ?」
 直江実綱も本庄実乃も読んだ。そして、驚き震えた。
「なになに。『我は国を守るために尽力したのに、諸将たちが喧嘩ばかりしていて全く協力してくれなかった。国をまとめる自信もなくなったので、このあたりで国主をやめたいと思う。我はこのとおり長尾家を再興した。もはや武将として思い残すことはない。これからは俗世を離れ、きままに仏道に励むことにしよう。さらばじゃ。喧嘩好きな諸将どもよ』ってか!」
 諸将はバタついた。
「なんてこったぁー!」
「わしらは殿に捨てられたってことかぁー!」
「こんな国内外に敵がひしめいているときに、無責任じゃないかー!」
「国主が不在で国が守れるかー!こんなことが他国に知れてみろ!切り取り放題にされるぞー!どうするんじゃー!」
 動揺する諸将に、政景が必死で言った。
「な、な、とりあえず私が国主を代行する。なーに。殿もそのうちに戻られるであろう」
「あんたなんかに国が守れるかー!」
「殿あっての越後じゃー!」
「政景殿は武田・北条連合軍にタバになって攻めかかられても、撃退する自信があるのかー!?」
「ない」
 即答であった。
 それだけは自信があった。
 一瞬、邪心を抱いた政景であったが、やはり深刻ぶって思い直した。
「なんとかして殿を呼び戻す以外に、越後が生き残る道はない」

歴史チップス ホームページ

inserted by FC2 system