★  危険!? 経済制裁は火に油を注ぐ結果になりはしないか?
〜 かつて日本が暴発に追い込まれたアメリカの経済制裁!!

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経済制裁の効果
1.ワル動く 〜 満州事変
2.ワル孤立 〜 国際連盟脱退
3.悪の枢軸 〜 日独伊防共協定
4.枢軸強化 〜 日独伊三国同盟
5.経済封鎖 〜 ABCD包囲陣
6.ワル暴発 〜 日米開戦へ

 平成十七年(2005)二月九日、サッカーのワールドカップドイツ大会アジア最終予選初戦・日本vs北朝鮮戦が埼玉スタジアム(埼玉県さいたま市)で行われた。
 試合は一点を争う好ゲームで、二対一で辛くも日本が劇的勝利を収めた。

 翌十日、北朝鮮は公式に核保有宣言をした。
「我が国はブッシュ政権の圧殺政策に対抗し、自衛のために核兵器を製造した」
 また、
「拉致問題にこだわり、朝日平壌
(ピョンヤン)宣言を白紙化した日本とは同席できない。六か国協議を無期限中断する」
 とも伝えてきた。
 前日の試合結果が、よほど悔しかったのであろうか?

 そんな北朝鮮に、
「経済制裁を」
 の声がある。
 すでに事実上の制裁は始まっているが、効果はあるのであろうか?
「経済制裁するぞ」
 そう脅すのは武器になるが、それを実際に行って失敗した場合、次の手はドンパチやり合うしかない。
「他国と協力して、みんなで経済制裁して北朝鮮を孤立させるのだ」

 無理であろう。
 中国やロシアが日本になびいてくれるはずがない。
 なびいたと見せかけても、必ずや影で援助し、金もうけに出ることは目に見えている。これでは城を取り囲まずに兵糧攻めをしているようなものだ。「援金ルート」はいくらでもあるのだ。

「せめてアサリなど魚介類だけでも止めれば、金正日(キム・ジョンイル)総書記やその側近たちにかなりのダメージを与えることができる」
 そんなことはない。
 彼らが受けたダメージは、その分、下層の者どもから余分に吸い上げればすむことである。経済制裁が行われて困るのは、罪なき末端の人々であろう。

 永禄十年(1567)、甲斐戦国大名武田信玄は、こんな決定をした。
駿河の今川氏真(いまがわうじざね)を滅ぼし、京都に上る準備をする」
 これに反対したのが、信玄の長男・義信
(よしのぶ)である。
いけません! 今川家は親類ではありませんか!」
 義信の妻は、氏真の父・義元の娘である。また、信玄の姉は義元の妻であった。
「それがどうした」
 信玄は義信を自殺させた。
 息子を殺してまで、駿河侵攻を行おうとしたのである。
「血よりも天下だ。感情よりも栄光だ」
 これを知った今川氏真は、相模の北条氏康
(ほうじょううじやす)と組んで「荷止(にどめ)」を行った。
攻めてくるなら、もう塩を売ってやらない」
 つまり、経済制裁を行ったわけだ。
 信玄は困った。領国の甲斐信濃も山国である。塩がなくては人は生きていけない。
 そこへ、思わぬ男が助け舟を出してきた。
 信玄のライバル・越後上杉謙信である。
 謙信は、かっこいいことを言った。
戦争を行うのは弓矢であって、米や塩ではない」
 で、信玄に塩を送ってあげた。
 これが「敵に塩を送る」という有名な逸話である。
 まことにアッパレな話であるが、本当のところは単なる金もうけだったとも、信玄への懐柔策だったとも伝えられている。
「助かった」
 感謝した信玄は、以後、謙信を攻めることはなく、駿河へ南進、氏真を追っ払ってしまったのである。
 つまり、氏真の経済制裁は、全く効果なかったわけだ。

 アメリカも経済制裁に効果はないと見ているのであろう。
 と、いうより、危険だと見ているのであろう。
「経済制裁すれば、北朝鮮は暴発しかねない
(「暴発味」参照)
 アメリカには苦い前例がある。
 それは、戦前の日本への経済制裁が、その暴発を招いたことである。
 ただ、当時のアメリカはわざと日本が暴発するように仕向けた感もあるが、現在の状況では、アメリカは北朝鮮の暴発を望んでいないであろう。
北朝鮮が開発しているテポドン二号はアメリカ本土まで飛ぶそうな。暴発すれば飛んでくるぞ」
「それより、日本韓国には雨あられと降ってくるだろうな」
 そのうち日本では、空襲警報が鳴りっぱなし、毎日の天気予報で降ミサイル確率がお届けされるようになるかもしれない。
「今夜の東京の天気は晴れ。降水確率は0%。降ミサイル確率は30%。平野部では比較的よく飛びますので注意してください」

 というわけで今回は、日本太平洋戦争をおっ始めてしまった(暴発に至った)経緯を紹介する。
 現在と似ているか似ていないかは、各位の判断にお任せしたい。

[2005年2月末日執筆]
参考文献はコチラ

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「アメリカの経済制裁」主な登場人物 

【ルーズベルト(ローズベルト)アメリカの大統領。連合国の指導者。

【ハ ル】アメリカの国務長官。ルーズベルト側近。

【フーバー】アメリカの大統領。
【スチムソン】アメリカの国務長官。フーバー側近。
【グルー】アメリカの駐日大使。親日派。

【チャーチル】イギリスの首相。連合国の指導者。
【蒋介石】しょうかいせき。中国の国民政府主席。
【施肇基】しちょうき。中国の外交官。国際連盟緊急理事会中国代表。
【スターリン】
ソ連の最高実力者。共産党初代書記長。
【ヒトラー】ドイツの総統。ナチス党首。枢軸国の指導者。

【松岡洋右】まつおかようすけ。国際連盟総会日本代表。外相。

【芳沢謙吉】よしざわけんきち。国際連盟緊急理事会日本代表。

【若槻礼次郎】わかつきれいじろう。首相。
【平沼騏一郎】ひらぬまきいちろう。首相。
【阿部信行】
あべのぶゆき。首相。

【近衛文麿】
このえふみまろ。首相。大政翼賛会総裁。

【東条英機】とうじょうひでき。陸相→首相。強硬派。

【板垣征四郎】
いたがきせいしろう。関東軍高級参謀→陸相。
【石原莞爾】
いしはら・いしわらかんじ。関東軍参謀。
【林銑十郎】
はやしせんじゅうろう。朝鮮軍司令官→首相。
【杉山 元】
すぎやまはじめ。参謀総長。陸軍の実力者。
【東久邇宮稔彦王】
ひがしくにのみやなるひこおう。首相候補。
【野村吉三郎】
のむらきちさぶろう。外相→駐米大使。
【永野修身】
ながのおさみ。軍令部総長。海軍の実力者。
【吉田善吾】よしだぜんご。海相。
【及川古志郎】
おいかわこしろう。海相。

【山本五十六】
やまもといそろく。海軍次官→連合艦隊司令長官。
【米内光政】
よないみつまさ。海相→首相。穏健派。
【木戸幸一】
きどこういち。重臣。内大臣。昭和天皇の側近。

【昭和天皇】
しょうわてんのう。日本軍統帥者。現人神。

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