1.アホって呼ぶな! | ||||||||||||||
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ボク、キレてる。
ボク、アホウドリだけど、キレてる。
アホウドリって性格がおとなしいはずなんだけど、ボク、やっぱりキレてる!
そう。
ボク、アホウドリ。
生まれながらのアホウドリ。
寝ても覚めても大きくなっても年を取っても、ずっとずっとアホウドリ……。
どうして自己紹介をするたびに、自分をさげすまなければならないんだ!
どうしてニンゲンに会うたびに、指差されて笑われなければならないんだ!
「あ!アホーなトリがいる!」
「アホーなトリが歩いてる!」
「アホーなトリが飛んでる!」
ふざけるんじゃねー!
ボクたちはアホーなトリなんかじゃねえー!
日本人よ!
何でボクたちに、こんな変な名前を付けやがったんだー!
こんなの動物虐待だーっ!
ボクたちはとってもかわいい。
つぶらな瞳――。
つるんとしたクリーム色の頭――。
丸みをおびたピンク色のくちばし――。
白地の羽に、端っこだけ黒色――。
赤ちゃんは黒い産毛で包まれていて、もこもこ――。
でも、ボクたちがアホウドリって名づけられた理由は外見じゃない。
動作がとろいからだそうな。
ニンゲンが近づいても、鈍くてすぐには逃げられないからだそうな。
好奇心旺盛(おうせい)で、自分からニンゲンに寄ってきちゃったりするからだそうな。
意味が違うだろー!
ボクたちがとろいのは大きいからだ!
何しろボクたちは世界最大の海鳥なんだ!大きいものは翼幅三メートル近くもあるんだぞっ!大きかったら動作が鈍くなるのは当然だろっ!
それに、ニンゲンから逃げなかったらアホだなんてひどすぎる!
ペンギンだってとろいし、ハトだってニンゲンに近寄ってエサをねだりに来るじゃないかっ!
信天翁(しんてんおう)――。
中国人はボクたちのことをそう呼んでいる。
え?御立派な名前じゃないかって?
どこがだ!
これは「天からエサが降ってくるのを信じているバカ」って意味なんだ!
そんなヤツ、いねーよっ!
それに比べると欧米人はオトナだ。
アルバトロス(albatross)!
かっこいい!
なんてかっこいい名前なんだ!
ゴルフ好きの方なら知っているでしょ?
ボクたちのこの英語名は、規定打数より三打少なくホールアウトするっていう、あのスゴ技の名前に採用されているんだ!
アルバトロスはイーグル(ワシ)やバーディー(小鳥)より上なんだぜ!どんなもんだ!
やっぱ欧米人は違うわ〜。ホッキョクグマとかでもそうだけど、動物のことをニンゲンよりも大事にしている感があるからねっ。
でも、欧米人はボクらのことをこうも呼んでいる。
グーニー・バード(gooney bird)――。
どんな意味かって?
「とんまな鳥」って意味だよっ!
なんだとー!
欧米人よ、お前らもかっ!
そうそう。思い出した。
日本語にもアホウドリのほかに別名があった。
どんな別名かって?
バカドリ(馬鹿鳥)――。
うおぉーーー!
ニンゲンなんて、みんなみんなサイテーだあー!