2.アホはもう死んでいる

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尖閣諸島問題
1.アホって呼ぶな!
2.アホはもう死んでいる
3.振り返ればアホがいる

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現在の尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺

 ボクはもう死んでいる。
 ボクは生前、今話題の尖閣諸島の主島・魚釣島
(うおつりじま)に住んでいた。
 アホウドリの仲間は今でこそ特別天然記念物に指定されるほどごくわずかになってしまったけど、明治時代までは日本の南方の島々に大挙して住んでいた。
 一千万羽!
 恐るべき数でしょ?
 テレビとかで南極のペンギンが大勢たむろしている様子を見たことがあると思うけど、あのペンギンを全部アホウドリに入れ替えて、雪を吹き飛ばした光景が当時の尖閣諸島や小笠原諸島
(東京都小笠原村)、伊豆諸島(東京都)のいたるところにあったんだ。
 江戸時代の文献によると、伊豆諸島の鳥島
(とりしま)沖からは蚊柱ならぬ「鳥柱」まで見えたそうだ。
 すごいでしょー?
 それなのに、現在ではごく少数……。
 どうしてかって?
 理由は分かっている!
 にっくきニンゲンどもが乱獲したために激減したんだっ!

 そんなにアホウドリの肉はうまいのかって?
 それが、まずいんだな。
 まずくて肉は肥料にしかならなかった。
 かのジョン万次郎
(中浜万次郎)が遭難して鳥島に流れ着いたときは、
「うまいうまい」
 って食ってたらしいけど、それは彼が飢餓状態だったからだろう。
 ニンゲンのねらいは肉じゃなくて羽のほうだった。高級羽布団にするため、羽毛を欧米に売りまくってボロもうけしたんだ!
 そうなんだ!ボクたちの仲間の命は、次から次へと布団になって吹っ飛んでいったんだっ!

 ボクはその初期の被害者の一人、いや、一鳥だった。
 あるとき、ボクたちの住む魚釣島に奇妙なイキモノがやって来た。
「なんだあれ?」
「初めて見るイキモノだ」
「古老によれば、かなり昔に似たようなイキモノを見たことがあるそうな」
「へんなのー」

 イキモノは何匹かいた。
 ボクたちの仲間は珍しがって見に行った。
 でも、なぜか誰も戻ってこなかった。
 ボクの家族も見に行った晩に所在不明になった。
 困ったボクは妙なイキモノが住んでいる巣へ様子を見に行った。
 そう。その妙なイキモノっていうのがニンゲンだったんだ。

 ニンゲンの巣にニンゲンはいたが、アホウドリの姿はなかった。
 ボクはニンゲンに近づいていった。
「ボクの家族はどこ?ボクの仲間たちはどこ?」
 言葉が通じないことは分かっていたが、それを何とか態度で示そうとした。
「古賀さん。鳥のほうから来ましたぜ」
「これだからアホウドリっていうんだよ」
 何をしゃべっているか解らなかったが、コガとかいうニンゲンはニター笑って棒を持った。
 次の瞬間、
 ばかーん!
 ボクはなぐり倒された。
「ひでえ!ボク、なんか悪いことした〜?」
 ボクは羽をむしられた。
 こんがり焼かれた。
 かまれた。むさぼられた。ペロリと平らげられた。
 そして、骨になって捨てられた。

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