4.討伐!山名時煕!!

ホーム>バックナンバー2010>4.討伐!山名時煕(やまなときひろ)!!

◆ 砲撃!延坪島!!
1.逆襲!細川頼之!!
2.説得!大内義弘!!
3.謀略!足利義満!!
4.討伐!山名時煕!!
5.恐怖!斯波義将!!
6.管領!細川頼元!!

 康応二年・元中七年(1390)三月、足利義満山名氏清と山名満幸を花の御所に呼び付けた。
「先年、余は厳島に詣でた」
「存じております。私もお供いたしました」
 満幸も厳島詣に随行していたのである。
「その際、そちらの当時の当主・山名時義にも随行するよう命じたが、ヤツは来なかった」
「はあ。あの当時、時義は病気で伏せておりましたゆえ」
「嫡子の時煕はちょっと顔を出しただけで帰り、その弟の氏之は来もしなかった……」
「時義を看病しておりましたゆえ」
「主君の召集命令に参じない武将が考えることとは何じゃ?」
「はあ?」
「謀反であろうっ!」
「なんと!」
「むほほーん!」
 氏清も満幸も仰天した。
 義満は仁王立った。額に青筋を立ててまくし立てた。
「そうじゃ!そちら山名一族は謀反をたくらんでいたのであろう!この花の御所をどうやって襲撃しようか、みなで悪知恵を働かせて計画を練っていたのであろう!なんというおぞましき一族であろうか!!」
「そっ、そんな!」
「謀反などと、決してそんなっ!」
「ならば時煕と氏之を討て!」
「なんですと!?」
「そちらが謀反の一味でなければ、時煕と氏之を討てっ!疑いを晴らしたくば行動で示してみよっ!そうすればそちらには時煕と氏之の遺領を分け与えるであろう!」
 氏清は必死で弁明した。
「おそれながら、うちの時煕に限って、そのような大それたことは考えるはずがございません。私が尋問いたしますゆえ、今しばらくお待ちのほどを」
「ほう。時間稼ぎか。やはり、そちらもグルであるな?」
「滅相もない!」
「もう一度命じる。時煕らを討て」
「!」
「!」
 義満はブルブル震えながら平伏する二人の耳元で言った。
「そちらは時煕や氏之と領国のことでもめているのであろう?このことはそちらにとっては好都合ではあるまいか?」
「!!」
「!!」
「えーい!逆賊を討つのか?討たないのか?返答や、いかにっ!?」
「ははあー!」
「必ずや、時煕らを討ち取ってまいりまするー!」

 返答はしたものの、氏清は消沈していた。
 花の御所を出てからも、ずっと思い悩んでいた。
「まずいことになった。一家の者を退治することは当家滅亡の元だ」
「そんなことはありません!これは好機ですよっ!」
 満幸はやる気マンマンであった。
将軍さまは幕府の裁断の非を認められた!だからこそ、オレたちに実力で切り取るよう命じられたのです!」
「そうであろうか?わしにはそうは思えぬが……。将軍さまは、とてつもなく恐ろしいことをお考えではあるまいか?」
「考えすぎですよ。オレたちは将軍さまの御命令を忠実にこなすのみ!」
「討伐命令に逆らうことはできぬ。しかし、時煕と氏之は討ち取るな。命を助けて逃がしてやれ。備後へ逃がして出家させればいいのだ」
「そうですか。オレは国さえ分捕れれば、それ以上のことは望みませんが」
 二人の会話を、ひそかに後をつけていた細川頼之が盗み聞きしていた。
 頼之は小さくなっていく氏清の後姿をジトーッと眺めた。
(満幸は凡人だが、氏清は人格者だな。人格者であれば、なおさら滅ぼしておかねばなるまい)

 三月下旬、氏清と満幸は出陣、氏清は時煕の本拠・但馬へ侵攻し、満幸は氏之の本拠・伯耆へ攻め込んだ。
 時煕と氏之は困惑した。
「なぜ拙者らが攻められるのだ?しかも一族に?」
「ボクたち何も悪いことしてないのに〜」
「とにかく逃げねば!」
「そうだ!まだ備後は攻められていない!備後に逃げよう!」
 時煕と氏之はそろって備後に逃亡した。

 が、なぜか備後は頼之がすでに制圧していた。
「敵陣へいらっしゃーい!」
 大軍勢に出迎えられ、時煕と氏之はあわてた。
「なんだお前らー!」
「どーしてボクたちがここに来ることを知っていたのー!?」
「やかましい!ひっ捕らえよっ!」
 二人はボコられ、捕らえられ、行方不明ということにされた。

 こうして時煕と氏之の領国は没収され、但馬氏清に、伯耆隠岐は満幸に、備後は頼之(一説に渋川満頼)に与えられた。

 また、この年は美濃尾張伊勢三か国の守護を務めていた土岐康行(やすゆき。頼康の甥)が成敗され、土岐氏の勢力も削減されている(土岐氏の乱・土岐康行の乱)

歴史チップス ホームページ

inserted by FC2 system