6.管領!細川頼元!! | ||||||||||||||
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明徳二年・元中八年(1391)四月に細川頼元が管領となった。
細川頼之自身は管領にならず、弟を就かせて後見したのである。
また、この年の九月に山名氏清は山城守護に再々任され、丹波・和泉・但馬と合わせて四か国守護になっている。
十月、頼之が花の御所にやって来た。
「将軍さまにお目通りさせたい連中がいるのですが……」
足利義満は不思議がった。
「ほー。それは誰じゃ?」
「御覧になればお分かりかと」
頼之は坊主頭の武将を二人連れてきた。
「この二人は今まで訳あって清水寺(きよみずでら。京都市東山区)近辺に潜んでおりました」
義満はしばらく二人を見ていたが、はっと思い出した。
「あー。山名時煕と氏之じゃな?」
時煕と氏之はぺっちゃんこに平伏した。
「その通りでございます!将軍さま!」
「お久しぶりです!将軍さま!出家してこんな頭になっちゃいました!」
頼之は言った。
「実は、前に二人が起こした謀反の容疑の件ですが、無実だったことが明らかになりました」
「なんだと!それはまことか?」
「はい。したがって、以前没収した領国は、二人に返すべきかと」
「無実と分かれば、返すべきであろうな。管領はどう思う?」
義満は頼元にも意見を求めた。
「当然かと」
頼元は付け足した。
「いいえ。それだけではすみません。二人は今まであらぬ疑いをかけられて虐げられてきました。そのつぐないとして以前よりも領国を増やしてやるべきかと」
「ほー。で、その加増分の領国はどこから持ってくるのじゃ?」
「もちろん山名一族から」
「当然じゃな。よし。氏清と満幸の領国のうち一国ずつをそちたちに分けてやろう」
時煕と氏之は大喜びした。
「ってことは、三か国の守護!やったぜー!」
「ありがとうございまーす!」
頼之はこの話をちまたに広めさせた。
「山名時煕さまと氏之さまの謀反の罪が許されたそうな」
「時煕さまは但馬・備後守護に、氏之さまは伯耆・隠岐守護に復帰なさるそうな」
「それだけではなく、お二人とも領国が増やされるそうな。山名氏清さまや満幸さまの領国を取り上げて、お二人に分配なさるそうな」
「将軍さまは山城の宇治(うじ。京都府宇治市)での紅葉狩りの際に、氏清さまにその話をされるそうな」
話はうわさになり、うわさがうわさを呼んだ。
「氏清さまと満幸さまは領国すべて没収されるそうな」
「将軍さまは今度は氏清さまと満幸さまを討たれるそうな」
「まず、氏清さまを紅葉狩りに誘って暗殺してから、満幸さまを討伐なさるそうな」
うわさを聞いた満幸は仰天した。
「何てことだ!そんなことはさせるかあー!」
満幸は馬を飛ばした。
和泉の堺(大阪府堺市)から宇治へ向かっていた氏清を淀(よど。京都市伏見区)で待ち伏せて止めた。
「叔父上!紅葉狩りには行ってはなりません!」
「いきなり何を言い出すのだ。将軍さまのお誘いをむげに断ることはできぬ」
「行けば領国が減らされますぞ!暗殺されますぞっ!将軍はオレたちの領国を没収して時煕や氏之にくれてやるつもりなんです!」
「まさか、そんな……」
「クッソー!オレたちは将軍の命令で時煕らを討った!それなのになんだ!今度は時煕らは赦免でオレたちが領地没収ってか!なんてこった!こんなブレブレの将軍なんていらねえー!康暦の時のように、今度は将軍の辞任を迫るべし!」
「いや、将軍のブレは作戦だ。わしはうすうす感づいていた。将軍の標的は初めから時煕や氏之ではなかった。わしや満幸だったのだ」
「それならなおさら立つしかありません!斯波も大内も土岐も富樫らも誘って謀反を起こすだけです!」
「……」
「叔父上!立ちましょう!ここで立たなければ、オレたちは滅ぼされるのですよっ!」
氏清は考えた。そして、ついに決意した。
「分かった。しかし、わしたちは謀反を起こすのではない。謀反人を成敗するのだ」
「え?どういうことで?」
「南朝に下り、逆賊北朝を討つ!足利将軍家こそ謀反人なりっ!」
氏清は紅葉狩りに行くのをやめた。
義満が宇治で待っていても、いつまでも姿を見せなかった。
「氏清め。来ないな」
約束をすっぽかされた義満は嬉しそうであった。
「来ますよ。きっと来ますよ」
頼之が言い、付け足した。
「――物騒な家来どもをたっくさん引き連れて」
(「平和味」へつづく)
[2010年11月末日執筆]
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