検証2.新羅征討を行ったのは?

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日本最初の紙幣の顔・神功皇后
本文1.新羅征討伝説1
検証1.仲哀天皇は消されたか?
本文2.新羅征討伝説2
検証2.新羅征討を行ったのは?
      

 では、「越の太守とは何者か?」というナゾを明かしてみたい。
 「本文2」には「越の太守」は登場していないが、あえていえば、「天照大神の御魂」がそれに当たるであろう。
 実は、彼が何者かを明かすと、新羅が彼の率いる征討軍に戦わずして降伏してしまった理由も解けてしまうのである。

 ヒントを出そう。
 時代劇「水戸黄門」である。
「この紋所が目に入らぬかー!」
「うわっ! こんなにスゴイ人だったの! ははー!」
 新羅の国民は、圧倒的な権威を持つその紋所を見せられてしまったため、思わず戦う気力も失せ、ひれ伏してしまったのであろう。

 これでお分かりの方もおられるかもしれない。
 そうである。
 仲哀天皇を殺し、神功皇后を操って新羅征討を行った「越の太守」とは、新羅の王子・天日槍
(あまのひぼこ)なのである。

 『古事記』によれば、天日槍は応神天皇の時代に、逃げた女房・阿加留姫(あかるひめ)を追いかけて来日したとされている(『日本書紀』では崇神天皇の時代)
 天日槍は初め、阿加留姫の住んでいる難波
(なにわ。大阪市。住吉大社がある)に上陸しようとしたが、「渡りの神」に邪魔されたため、多遅摩(たじま。但馬。兵庫県北部)に回ってそこにいついた。

「渡りの神」とは、阿加留姫の「別の亭主」に違いない。
「別の亭主」とは誰か?
 当時、近畿地方で勢力を誇っていた「原大和朝廷」の大王位継承者の一人・足仲彦尊
(あしなかつひこのみこと)、後の仲哀天皇であろう。
 つまり、阿加留姫とは、神功皇后というわけだ。
 『日本書紀』には、神功皇后は天日槍の子孫とあるが、私は彼女を彼の妻だったと見ている。

 「別の亭主」の存在を知った天日槍は怒り狂った。
「フタマタかけていたのか!」
 何とか神功皇后を取り戻す手段を考えた。
 敵は原大和朝廷の王位継承者である。これに対抗するには、自分も力をつけるより他になかった。
 天日槍は勢力を拡張した。山陰を駆け出しに、瞬く間に北陸地方を平定、角鹿
(敦賀)に居を構え、誉田別神(ほんたわけのかみ・ほむたわけのかみ)と名乗った(ただしこの物語では以降も天日槍で統一)

 その頃、原大和朝廷では、足仲彦尊が異母弟と大王位を争っていた。
 天日槍は王位継承争いに介入、足仲彦尊に味方し、仲哀天皇の即位に協力してやったのである。
 仲哀天皇は天日槍に感謝した。お礼に角鹿に出向いた。そして、神功皇后を角鹿にとどめたまま、西征に赴いた。

 天日槍は喜んだ。
 ダンナの居ぬ間に神功皇后を我がものにした。
 結果、神功皇后は子を宿した。
 去来紗別尊
(いざさわけのみこと)である。
 彼は元服した後、実父と名前を交換し、誉田別尊と名乗るようになった。つまり、後の応神天皇になるわけだ。

 これで神功皇后がまたに石をはさんだ理由もお分かりであろう。
 彼女は本当の父が誰かということを疑われないよう、出産時期をごまかすという「偽装工作」を行ったわけである。

 神功皇后は秘密を宿したまま、熊襲征討を目指す仲哀天皇のいる九州に向かった。
 天日槍も、大軍を率いて彼女についていったものと思われる。
 天日槍のところには、朝鮮半島の情勢が、逐一伝えられていたことであろう。高句麗の南進も、新羅百済の危機も、知っていたことと思われる。
「やはり新羅は私が治めなければならない。私が王位につかなければ、祖国は高句麗に滅ぼされてしまう!」
 そのために、新羅征討を画策したわけである。正確には征討ではなく、救援であるが。

 ところが、仲哀天皇は、出兵に反対した。
 なぜか神功皇后が腹を膨らませていたことにも、余計に腹が立ったのであろう。断固聞き入れようとしなかった。
「朕は熊襲を攻めるのっ!」
 天日槍は、ため息をついた。
「そうか。聞いてくれないのか……」
 でも、新羅征討をあきらめたわけではなかった。
「だったら、死んでもらうしかあるまい」
 というわけで、仲哀天皇を殺害したのである。
 直接手を下したのは、武内宿祢であろうか? 
 私は武内は、加羅の有力者だと見ている。

 天日槍の新羅救援は成功した。
 天日槍は新羅の王位に就いたのであろう。
 危機を免れた百済も感謝し、神功皇后に七支刀
(しちしとう)を贈った。
 帰国した神功皇后は、応神天皇を出産、東征して畿内の原大和朝廷の残存勢力を一掃し、新大和朝廷を創立した。
 この東征が後に、天孫降臨や神武天皇
(じんむてんのう)の東征のモデルになったものと思われる。

[2004年11月末日執筆]
参考文献はコチラ

「新羅征討伝説」登場人物

【神功皇后】じんぐうこうごう。仲哀天皇の皇后。気長宿祢王の娘。

【仲哀天皇】ちゅうあいてんのう。大王。日本武尊の子。

【武内宿祢】
たけしうちのすくね。仲哀天皇・神功皇后の側近。

【気長宿祢王】おきながすくねおう。神功皇后の父。
【葦髪蒲見別王】あしかみのかみわけおう。仲哀天皇の異母弟。

【北九州の豪族たち】
【天照大神】
あまてらすおおみかみ。太陽神。皇室祖神。
【住吉神】
すみよしのかみ。海の神。
【新羅の国王】
【新羅の人々】


【天日槍】
あまのひぼこ。新羅の王子。越の太守。

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